銀行の通帳レス・印鑑レス口座でできないことはあるか 後で届け出可能な銀行も

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通帳レス口座と印鑑レス口座

メガバンクが、通帳レス口座(無通帳口座)や印鑑レスでの口座開設を推奨し、手続きの効率化を試みています。

紙通帳が有料化する可能性があることを考えると、今のうちに通帳なしの取引に慣れておくメリットはあると思います。

スマホの扱いに慣れている人や、銀行窓口に行く機会がない人は、紙の通帳がなくてもあまり困りません。しかし、「通帳や印鑑がなくても大丈夫なの?」と不安に思う人もいます。

今回は、通帳や印鑑登録のない銀行口座でできないことを解説します。結論からいうと、日常で困ることはほとんどありません。

通帳レス口座・印鑑レス口座とは

通帳レス口座・印鑑レス口座とは、その名の通り紙通帳を発行しない口座と、印鑑登録の必要がない口座を指します。

一般的に、銀行窓口で口座開設すると、その場で届出印(いわゆる「銀行印」)を登録します。キャッシュカードとあわせて通帳も発行します。通帳レス口座・印鑑レス口座は、この手続きをなくした口座です。

多くの銀行では、通帳を発行せずに口座開設すると、印鑑登録も不要な「通帳・印鑑レス口座」となります。

しかし、印鑑登録した銀行口座を無通帳型に切り替えたり、ネット銀行口座開設後に印鑑登録をすると、「通帳レスだけど、印鑑登録済みの口座」になります。

※印鑑登録できるネット銀行は少数です。

通帳レス口座では、残高照会や取引明細の確認、振り込みなどをネットバンキングで行います。スマホでネットバンキングにログインすれば、いつでも口座状況が確認できます。

実店舗がある銀行で通帳・印鑑レス口座を持つと、ネット銀行のような使い方になります。

大手銀行では、おもにネットやアプリから口座開設をすると、通帳や印鑑を発行しないシステムを導入しています。

大手銀行のネット口座開設 通帳と印鑑の扱い比較
三菱UFJ銀行
パソコンやスマホアプリからの口座開設は、銀行印不要。通帳の発行もなし。
三井住友銀行
パソコンやスマホアプリからの口座開設は、銀行印不要。通帳の発行もなし。
みずほ銀行
ネットからの口座開設時、支店を実店舗に指定すると通帳発行。郵送で届く通帳に同封される「印鑑届」を返送し、届出印も登録。インターネット支店を選ぶと、通帳発行なし。
りそな銀行
どの口座開設方法でも印鑑不要。パソコンやスマホアプリから口座開設すると、通帳発行もなし。

上記大手銀行のなかでも、りそな銀行は印鑑レスに積極的です。大手銀行のなかでいち早く、全店舗で届出印の登録を不要にしました。

三菱UFJ銀行と三井住友銀行は、店舗で口座開設すると銀行印が必要です。ネットやアプリからの開設なら、通帳と印鑑どちらも不要になります。

対してみずほ銀行は、ネットから口座開設しても通帳発行・印鑑登録を行います。口座開設時に「インターネット支店」を選んだ場合のみ、通帳レスとなります。

ネットからの口座開設で支店を選べるのは、みずほ銀行独特の仕組みです。

三菱UFJ銀行・三井住友銀行・りそな銀行は、ネットから口座開設を申し込むと、自動的にインターネット支店の口座となります。

通帳レスで優遇を受けられる銀行もある

大手銀行には、通帳を発行しない口座にすると、優遇を受けられる銀行もあります。無通帳口座のユーザーが増えると、銀行はコストを削減できるからです。

私たちは無料で通帳を発行してもらえますが、銀行は通帳の印刷代や印紙税を負担しています。口座開設者が記入した書類管理も必要です。通帳レス口座が普及すれば、銀行は今まで負担してきたこれらのコストをなくすことができます。

大手銀行の通帳レス口座の優遇
三菱UFJ銀行
手数料優遇のある「スーパー普通預金(メインバンク プラス)」で、自社ATMの時間外手数料が無料になる。
りそな銀行
アプリと無通帳申し込みで1,000ポイントプレゼント。りそなクラブポイントは、他社ポイントや電子マネーに交換可能。

メガバンクのなかでは、みずほ銀行と三井住友銀行には通帳レスによる優遇がありません(2022年6月14日時点)。三菱UFJ銀行にはATM手数料の優遇、りそな銀行にはポイント付与による優遇があります。

今は「通帳をなくすとメリットがある」という状況ですが、いずれは「紙通帳の発行は有料」という流れになると考えられます。

長く超低金利時代が続き、銀行は融資の利息で利益を上げられなくなっています。そのため、ATM手数料や振込手数料を少しずつ値上げしたり、口座維持管理手数料を検討したりと、手数料の収益を上げようとしています。

その流れで、いずれは紙通帳も有料になる可能性が高いといわれています。

→紙通帳の有料化について、詳細はこちら

ネット銀行は通帳・印鑑不要

ネット銀行は、基本的に通帳・印鑑レス口座です。

ネット銀行は実店舗や紙の通帳をなくし、運営を効率化しています。ネット銀行の手数料が低く、預金金利が高いのは、実店舗がある銀行よりコストカットしているからです。

実店舗があるイオン銀行などでは、後日の印鑑登録もできます。

しかし、通常の口座開設では、印鑑は不要です。

ネット銀行での取り引きは、すべてスマホやパソコンで行います。入出金は、提携銀行のATMやコンビニATMを使います。

「スマホやパソコンの扱いが苦手」「紙の通帳をずっと保管したい」という人には不向きかもしれません。平日に窓口に行く時間がなく、スマホで取り引きしたい人にとっては便利です。

個人的には、ネット銀行は窓口がないぶん、ネットバンキングアプリの使いやすさをより追求している印象があります。

私もメガバンクとネット銀行の口座を複数持っていますが、ネットバンキングはネット銀行のほうが使いやすいと感じています。

通帳・印鑑がないとできないこと

日常生活において、紙の通帳と印鑑登録がなくて困ることは、ほとんどありません。

ネットバンキングを活用すると、窓口に行く機会がほとんどなくなります。窓口に行かないと、印鑑を使う機会も激減します。

印鑑文化がある国は、世界的には少数です。銀行取引で印鑑を使わなくても、取り引きやセキュリティ対策はできます。

保険の口座引き落とし時に記入する申込用紙などには、届出印の捺印欄があります。けれども、印鑑レス口座で対処する方法はあります。

→銀行印のないネット銀行で、届出印が必要なときの対処法はこちら

通帳がないと利用できないサービスは、一部あります。

キャッシュカードを失くすと入出金できない

キャッシュカードを失くした際、実店舗がある銀行では、通帳と届出印があれば窓口で入出金できます。再発行手続き中も、お金が引き出せます。

通帳レス・印鑑レスだと、キャッシュカード紛失時や暗証番号を忘れたときに、入出金できなくなります。カード再発行の手続き中に、急ぎの出費があると困るかもしれません。

ただし、銀行のキャッシュカードが使えなくても、ネットバンキングは引き続き使えます。

通帳レス口座のキャッシュカード紛失中、どうしても出金する必要がある場合は、ネットバンキングで自分名義の他行へ振り込み、他行キャッシュカードで引き出せば対応できます。

→キャッシュカードが使えないとき、急ぎで出金する方法まとめ

過去の取引明細を長く残せない

通帳は、一度記帳した取引明細を、紙ベースでずっと保管できます。ネットバンキングは、過去の取引明細を閲覧できる期間が決まっています。

数年前の取り引きを見返したいときに、閲覧期限が過ぎている可能性があります。

ネットバンキングで取引履歴を閲覧できる期間は、銀行によってまちまちです。1年ほどしか遡れない銀行もあれば、10年以上昔の明細を見返せる銀行もあります。

■主要銀行のネットバンキング 取引明細の照会期間

銀行 明細を確認できる最長期間
三菱UFJ銀行 10年
三井住友銀行 30年
みずほ銀行 10年
りそな銀行 13ヶ月
ゆうちょ銀行 通常2ヶ月、ゆうちょダイレクトプラス利用者は20年(2021年3月以降の明細)

ネット銀行のなかには、過去の明細を無期限で閲覧できる銀行もあります。

過去の取り引きを見返す機会が多い人は、口座開設時に明細閲覧期間を確認しておくと安心です。

これまでお取引いただいたすべての入出金明細や取引明細をご確認いただけます。Webサイトにログイン後、[残高・明細・振込状況]-[入出金明細]から、ご確認ください。

GMOあおぞらネット銀行 公式サイト「よくあるご質問『円普通預金口座の入出金明細は、どのくらいの期間を、どのように確認できますか?』」より引用

インターネットバンキングでこれまでお取引いただいた直近10年分の入出金明細や取引明細をご確認いただけます。

auじぶん銀行 公式サイト「よくある質問『円普通預金口座の入出金明細は、どのくらいの期間を、どのように確認できますか?』」より引用

私は、過去取引明細を1~2年見返せれば、あまり困らないと思います。1年以上昔の明細を見返す機会は、そこまで多くありません。

過去の利用明細が必要になるシーンの代表は、相続時です。

相続時は、残高証明書という、正式な書類を発行する必要があります。通帳のコピーや、ネットバンキング画面のプリントアウトでは、原則として対応できません。

残高証明書は、通帳レス・印鑑レス口座でも発行できます。通帳がなくても、問題ありません。

■無料で残高証明書データをダウンロードできるネット銀行も

残高証明書を発行するには、500円前後の手数料が必要です。三菱UFJ銀行や三井住友銀行では、770円~880円かかります。

しかし、ネット銀行の「住信SBIネット銀行」と「GMOあおぞらネット銀行」では、残高証明書のPDFデータを無料で発行できます。

※印刷した状態の残高証明書を郵送で取り寄せる場合は、手数料がかかります。

一部のサービスは利用できない

通帳レス・印鑑レス口座の大半は、インターネット支店で開くことになります。

一部の銀行では、実店舗で開設した口座と、インターネット支店で開設した口座でサービス内容が異なります。

実店舗の支店・インターネット支店でサービス内容が異なる例
りそな銀行
インターネット支店「アルファ支店」「ベータ支店」では、海外送金や信託機能商品が一部利用できません。
あおぞら銀行
インターネット支店「BANK」では、保険を取り扱っていません。そのかわり、実店舗より好金利なネット定期が利用できます。

預金や振り込みといった基本的な取り引きは、窓口でもネットバンキングでも利用できます。私自身、日ごろからネットバンキングを活用していますが、取り引きできず困った経験はほとんどありません。

私が唯一、不便だと感じたのは、ゆうちょ銀行のネットバンキング「ゆうちょダイレクト」です。

ゆうちょダイレクトでは、定期貯金・定額貯金の預け入れはできても、払い戻しができません。定期貯金を中途解約したいときは、窓口に行かなくてはなりません。

無通帳型口座「ゆうちょダイレクトプラス」に切り替えれば、払い戻しできるようになります。

しかし、ゆうちょダイレクトプラスでは、定額貯金の預け入れができません。

→ゆうちょ銀行の定期貯金・定額貯金の利用方法はこちらで解説しています。

ゆうちょ銀行以外の大手銀行やネット銀行では、このようなことはありません。

定期預金の預け入れから中途解約、満期時の取扱方法の変更まで、基本的にはスマホやパソコンで完結できます。

通帳・印鑑レスのメリット

通帳や印鑑がないとできない手続きを確認し、大きな問題を感じない人には、通帳レス・印鑑レス口座を持つ価値があると思います。

三菱UFJ銀行のように、通帳レス・印鑑レス口座に切り替えると、優遇を受けられる銀行もあります。

優遇がなくても、記帳の手間が不要になり、通帳や印鑑の紛失・盗難リスクがなくなることは、大きなメリットです。

紙の通帳は、定期的にATMで記帳する必要があります。ネットバンキングはリアルタイムで明細が反映され、記帳の必要がありません。

また、通帳を紛失すると、現在の通帳の利用停止や再発行の手続きが必要です。再発行手数料は1,000円前後かかります。

届出印をなくした際も、印鑑を使う取り引きの停止手続きと、新たな銀行印の作成が必要です。銀行印は、安価なネット通販でも3,000円前後はかかります。

通帳レス口座や印鑑レス口座では、これらの手続きがすべて不要となります。

自宅で通帳や印鑑がみつからないならまだしも、外出先で紛失したり、盗難に遭ったりすると大変です。

通帳と印鑑があれば、窓口であらゆる取り引きができてしまいます。一緒に管理するのは危険です。

キャッシュカードを失くしても、暗証番号がわからなければ取り引きできません。

窓口に行く時間がない人にとって、通帳や印鑑なしの口座を持つメリットは大きいと思います。

手数料や預金金利など、サービス内容を重視するなら、ネット銀行がおすすめです。実店舗がなくても、電話や問い合わせフォームで質問できます。

いざというときに窓口で相談したい人は、実店舗がある銀行の通帳・印鑑レス口座が向いています。ふだんはネットバンキングを使い、困ったときは窓口で相談できます。

ネットバンキングやネット銀行のセキュリティに不安がある人は、次の記事をご参照ください。

この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。元は貯蓄下手だったが、現在は貯金や資産運用を自動化し、着々と資産形成中。メガバンクとネット銀行の使い分け方にはこだわりあり。

より良い情報をお届けするため、疾風AI がメンテナンスを担当いたしました。(2022年6月14日 更新)

ありがとうございます。

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