現金はどれくらい汚い?紙幣や硬貨につくウイルス対策に有効な方法とは

紙幣と硬貨は汚い?

新型コロナウイルス感染症の流行で、銀行窓口で新札交換する人が増えています。なかには、誰も触っていない、新しい紙幣や硬貨を使いたいと考える人もいるようです。

多くの人の手に渡った現金に、さまざまな汚れが付着しているのは事実です。しかし、汚れの正体を調べると、新札交換までは行う必要がないとわかります。

「ウイルス感染を予防する」という目的なら、両替のために頻繁に銀行へ行くより、手洗いを徹底するほうがおすすめです。

これを機に、キャッシュレス決済を始めるのもよいと思います。ふだん現金払い中心の人に向いているキャッシュレス決済もあります。

紙幣や硬貨の汚れの正体とは

きれいに見える紙幣や硬貨でも、表面には目に見えない汚れが付着しています。手の皮脂だけでなく細菌やウイルスもついているため、清潔とはいえません。

現金に付着する汚れ
皮脂や体液
多くの人が触ったお金には、指先についている皮脂や汗、唾液、鼻水などが付着する。
細菌や微生物
人間の腸や尿で検出される細菌が付着していることが、アメリカの研究でわかっている(※1)。食中毒や腸炎、感染症の原因になる細菌も。
ウイルス
新型コロナウイルスはダンボールの表面で最長24時間ほど生存するため、紙幣に付着している可能性もある(※2)。

細菌やウイルスは、紙の表面に付着してからしばらく生存します。生存期間は細菌・ウイルスの種類、気温や湿度などによって異なります。

インフルエンザウイルスは、紙や衣服に付着すると8~12時間ほど生存します。新型コロナウイルスは、ダンボールに付着すると最長24時間生存するとわかっています。

現金を取り出したあとに顔を触ったり食事したりすると、ウイルスを体内に取り込む可能性はあります。

ただし、日本の現金は世界的に見ると、かなり清潔なほうだといわれています。日本人は紙幣を丁寧に取り扱う人が多く、古い紙幣を数年で処分していることが大きいと考えられます。

日本の紙幣の寿命は1~4年

日本の1万円札は3~4年、1,000円札や5,000円札は1~2年で日本銀行が回収し、裁断したうえで処分しています。

銀行券(お札)の平均的な寿命は、一万円券では4〜5年程度です。五千円券と千円券では、つり銭などでやり取りされることが多く、傷みやすいこともあって、1〜2年程度となっています。

日本銀行 公式サイト「お札の寿命はどれくらいですか? 使えなくなったお札はどうなりますか?」より引用

古い紙幣の処分は、衛生面だけでなく、ATMでの紙幣読取エラーを防げるメリットもあります。

裁断した紙幣は、段ボールやトイレットペーパーなどの紙製品にリサイクルされます。裁断時に発生する屑は焼却となりますが、なるべくリサイクルに回しています。

■日本の紙幣は和紙製

日本のお札は、特殊な和紙で作られています。麻などの植物繊維をもとに加工した紙で、コピー用紙などより丈夫です。

薄くても破れにくく、しわになりにくい素材として、高品質な紙を使っています。

他国のプラスチック紙幣との比較

海外では、「プラスチック紙幣」と呼ばれるお札を採用する国もあります。従来の紙幣より丈夫なポリマー製で、紙より長持ちする紙幣です。

生産コストは2倍近くかかるものの、従来の紙幣より劣化しにくくなるため、処分のサイクルは長くなります。

プラスチックだけど紙幣、というとイメージが沸きにくいかもしれません。

たとえば、日本の選挙投票用紙は、ポリプロピレンというプラスチック素材でできた紙(ユポ紙)を使っています。紙と比べて折り目がつきにくく、半分に折って投票しても自然と開きます。

プラスチック紙幣も、投票用紙のように耐久性の高いお札です。

プラスチック紙幣は紙より汚れにくいのも利点だといわれていますが、ウイルスは紙などの凹凸があるものより、プラスチックなどのツルツルした表面のほうが長く生存する傾向にあります。

新型コロナウイルスでは、ダンボールの表面での最長生存期間は24時間なのに対し、プラスチックの表面では最長2~3日生存したという研究があります。

感染予防という点では、プラスチック紙幣より従来の紙幣のほうが、安全性が高いといえるかもしれません。

また、プラスチック紙幣には、偽造が困難というメリットもあります。しかし、日本の紙幣はすでに世界トップクラスの偽造防止対策を行っています。

すでに高い印刷技術で紙紙幣を製造している日本が、紙幣の再印刷やATM総入れ替えなどのお金をかけて導入するメリットは薄そうです。

■日本の紙幣の偽造防止技術

日本の紙幣は、透かしやホログラム、虫眼鏡でも見えないほど小さな文字を仕込むなど、高い技術で作られています。

インクも特殊で、一部には紫外線を当てると模様が発行する印刷が施されています。

世界的に見ても、偽造が難しいお金のひとつです。

新札交換のウイルス対策効果は薄い

「ウイルスや細菌の感染を防ぐ」という目的で、紙幣や硬貨を新品に両替するのは効果が薄いと思います。

細菌やウイルスは、永遠にお金の表面で生存するわけではありません。わざわざ銀行で新札や新硬貨に交換しなくても、財布に数日入れているあいだに死滅します。

買い物のあとの手洗いや、顔や口元を触らないことを徹底するだけで、十分な感染症対策になります。

むしろ、換気が難しい銀行窓口へ通い、多くの人がタッチしているであろう両替機を使ったり、共有のボールペンで両替依頼書を書いたりするほうが、感染リスクを上げるかもしれません。

紙幣の洗浄もおすすめしない

まれに、紙幣を除菌洗剤などで洗う人もいますが、おすすめできません。

日本の紙幣が丈夫とはいえ、あくまで素材は紙です。水や洗剤で濡らすと破れる可能性があります。

紙幣が破れたら、銀行に両替しに行くことになります。両替機は使えないため、窓口で手続きする必要があります。

硬貨をウェットティッシュで拭いたりするぶんにはよいですが、紙幣はそのまま使うほうが無難です。

状態が悪いと紙幣交換できない場合あり

汚れたり破れたりした紙幣の交換は、損傷の範囲によって引き換えられる金額が変わります。

紙幣の面積のうち、5分の3以上がなくなっていると、交換できません。

3分の2以上が残っている場合
全額引き換え。少し破れたぐらいなら、問題なく両替可能。
5分の2以上、3分の2未満が残っている場合
半額引き換え。1万円札なら、5,000円札との交換となる。
5分の2未満しか残っていない場合
引換不可。

損傷した紙幣の交換については、日本銀行の公式サイトにてくわしく解説されています。

紙幣消毒器は業務用のみ

ちなみに、業務用の紙幣消毒器は国内でも購入できます。韓国のSIM社が製造する「SMI MONEY STERILIZER」という機器で、プラズマイオンで紙幣や硬貨を除菌するものです。

記事執筆時点(2020年4月28日)では、株式会社タックスという企業が正規代理店として販売しています。申込書をFAXで送り、代金を銀行振込することで購入できます。

ただし、1台あたり約15万円と、かなり高価です。どちらかというと、レジなどで現金を扱う企業向けの製品です。

現金払いの人に合うキャッシュレス決済もある

現金の衛生面がどうしても気になる人は、これを機にキャッシュレス決済を試してみるのもおすすめです。

最近は、クレジットカードやデビットカードを店員さんに渡さずに支払えるお店が増えています。自分以外はカードをいっさい触りません。たまにウェットティッシュでカードを拭けば、清潔に保てます。

手が届くところにカード決済端末が設置してあるレジは、自分でカードを差し込んで決済できます。スーパーなどで導入が進んでいる印象です。

カードをかざすだけでタッチ決済できるものもあります。

とはいえ、ふだん現金払いを利用する人のなかには、「クレジットカードは使いたくない」という人もいると思います。後払いのクレジットカードはお金を使いすぎるリスクがあるため、敬遠する人が多いのも事実です。

クレジットカードに抵抗がある人は、デビットカードがおすすめです。使い方はクレジットカードと同じですが、支払った時点で口座から即時引き落としになるため、口座残高以上に使いすぎることがありません。

クレジットカードとデビットカードの違い

デビットカードは、銀行が発行するカードです。会計時にカードを出すだけで決済でき、細かい設定が必要なスマホ決済(PayPayなど)よりシンプルです。

すでに口座を持っている銀行がデビットカードを扱っていれば、デビット機能付きキャッシュカードへ切り替えられるかもしれません。

ほとんどの銀行は、ネットからカード切り替えを申し込めます。後日郵送で、デビットカード機能がついた新キャッシュカードが届きます。

▼例:三井住友銀行VISAデビット機能付きキャッシュカード(なでしこデザイン)
SMBCデビット

より現金に近い使い方をするなら、新しくデビットカード用の銀行口座を開設し、使う分のお金だけを預けておくのもありです。「月5万円」と決めてお金を預ければ、それ以上使わずにすみます。

「生活費用」「おこづかい用」などお金を分けて使っている人は、イメージしやすい管理方法だと思います。

※1 Gedik H, et al (2013). Antimicrob Resist Infect Control. 2013;2(1):22. Retrieved from https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC3765964/

※2 The New England Journal of Medicine (2020, April 13). Aerosol and Surface Stability of SARS-CoV-2 as Compared with SARS-CoV-1, Retrieved from https://www.nejm.org/doi/full/10.1056/NEJMc2004973?query=featured_coronavirus

キャッシュレス決済が不安な人向け

この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
2級ファイナンシャル・プランニング技能士。元は貯蓄下手だったが、現在は貯金や資産運用を自動化し、着々と資産形成中。メガバンクとネット銀行の使い分け方にはこだわりあり。(Twitterアカウントはこちら

より良い情報をお届けするため、一条まつこ がメンテナンスを担当いたしました。(2020年4月28日 更新)

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