デメリットの多いミックスローンより、変動金利かフラット35のニ択がおすすめ
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ミックスローンとは、変動金利と固定金利を好きな割合で組み合わせる住宅ローンです。変動金利の金利の低さと、固定金利の安心感、双方のメリットを得られます。
しかし、実はデメリットも多く、個人的にはおすすめできません。最大のデメリットは、想像以上に金利や手数料が高くなる点です。繰り上げ返済で利息を抑えないと、家計への負担が大きくなります。
ミックスローンは、金利上昇に備えるために、コストをかける余裕がある人向けのプランといえます。
個人的にはミックスローンより、「変動金利」か「フラット35」のどちらかで検討するのをおすすめします。その理由を、実際に利息シミュレーションも交えて解説します。
目次
メリットは金利上昇リスクの低下
ミックスローンのメリットは、金利上昇のリスクに備えられることです。
変動金利と固定金利を好きな割合で組み入れ、どれくらいリスクを受け入れられるかによって柔軟に返済プランを組めます。
必ずしも、変動金利と固定金利の割合が50%ずつでなくてもOKです。
■ミックスローンの組み入れバランス例
- リスクをなるべく抑えたい人
- 変動金利:固定金利=30%:70%
- 利息を少なめにしたい人
- 変動金利:固定金利=80%:20%
「変動金利」は、住宅ローンの金利タイプのなかでもっとも低金利です。そのかわり、景気が上向くと金利が上がり、毎月の返済額が高くなるリスクがあります。
もっとも高金利なのは「固定金利」ですが、契約から完済まで同じ金利で、返済計画が立てやすくなります。
ミックスローンを利用する人の多くは、「変動金利だけだと、将来の金利上昇が不安」という理由で検討します。
変動金利と固定金利をミックスすれば、万が一金利が上がっても、固定金利分の返済額は一定に抑えられます。
ミックスローンの応用的な組み方として、変動金利と変動金利でミックスするという方法もあります。
変動金利の住宅ローンを2本組んで、状況に応じてどちらか一方を固定金利に変更するというやり方です。
例:変動金利を70%:30%で組み、金利が上がりそうなら70%分を固定金利に変更する
当初固定金利型もミックスできる
「当初固定金利」という金利タイプも、ミックスローンに組み込めます。
当初固定金利型では、はじめの数年は固定金利で、その後金利タイプを選べます。銀行公式サイトには「当初10年固定」「当初3年プラン」といったプラン名で載っています。
最初の固定金利期間中は、金利引き下げ幅が最も大きく、返済負担を軽くできます。
子供の高校卒業まで返済負担を抑えたい人や、退職金などまとまった収入が入る時期がわかる人におすすめです。
■ミックスローンで当初固定金利型を組み入れる例
- 20年後に退職金が入る人
- 変動金利:当初20年固定=50%:50%
- 10年後と25年後に、子供が一人ずつ独立する人
- 当初10年固定:当初25年固定=60%:40%
デメリットは金利と手数料の高さ
ミックスローンは、一見すると、固定金利と変動金利の「よいとこ取り」「折衷案」です。
しかし、金利は高めで、住宅ローン契約時の諸費用も2本分かかります。住宅ローンとしてはやや割高です。
ミックスローンを検討するときは、毎月の返済額と初期費用を事前にシミュレーションし、支払えるかどうか吟味する必要があります。
金利は高め
ミックスローン最大のデメリットは、金利が高い点です。
どの銀行住宅ローンにも、得意な金利タイプがあります。変動金利と固定金利、どちらも業界最低水準の銀行はありません。
1つの銀行で変動金利と固定金利のミックスローンを組むと、一方はその銀行の不得意な金利タイプを選ばねばなりません。その結果、トータルの利息は高めになります。
ためしに、変動金利が低金利と評判の「住信SBIネット銀行」で、利息を比較してみました。
前提条件:
・借入金額3,000万円、借入期間35年、金利は記事執筆時点のデータで計算
・当初10年固定では、固定金利特約期間の後に変動金利へ移行するとして計算
・ミックスローンでは、変動金利と固定金利(通期引き下げ)を半々で組み入れ
金利タイプ | 金利(年) | 利息 |
---|---|---|
変動金利 | 0.44% | 237万7,441円 |
ミックス(変動+当初10年固定) | 0.44%+0.91% | 370万9,588円 |
当初10年固定 | 1.35% | 766万3,293円 |
ミックス(変動+全期間固定) | 0.44%+2.92% | 1,015万6,301円 |
全期間固定 | 2.92% | 1,793万7,361円 |
特に、変動金利と全期間固定金利をミックスすると、かなり利息が多くなりました。
変動金利が低金利な住信SBIネット銀行は、全期間固定金利の金利が高めです。ミックスローンにすると、利息を大きく押し上げてしまいます。
当初固定10年なら、もう少し利息を抑えられます。しかし上記では、固定金利期間後に変動金利に移行する前提で試算しています。もし、返済から10年後に再び固定金利を選ぶなら、より利息は膨らみます。
■フラット35はミックスローンにできない
公的住宅ローンの「フラット35」は、全期間固定金利の住宅ローンのなかでも最低水準の金利です。
しかし、フラット35はミックスローンとして組み入れられません。
住信SBIネット銀行や楽天銀行では、自社オリジナルの住宅ローンとフラット35をどちらも扱っています。しかし、ミックスローンに組み込めるのは、自社の住宅ローンのみです。
諸費用が2本分かかる
ミックスローンは、変動金利と固定金利の住宅ローンを2本契約するので、諸経費も住宅ローン2本分が発生します。
まず、「登記費用」は必ず増加します。変動金利と固定金利で、別々の抵当権を設定するからです。
店頭で契約する場合は、「印紙税」も2倍かかります。印紙税が軽減される場合もありますが、基本的には住宅ローン2本分かかります。
保証料や事務手数料など、ミックスローンでも金額が変わらない手数料もありますが、10万円以上は諸経費が上がると思っておくべきです。
契約手続きも2本分かかる場合あり
銀行によっては、ミックスローンの契約書類をすべて2セットずつ提出しなければなりません。
住宅ローンの書類は記入欄が非常に多く、1通作成するのも大変です。ミックスローンは、住宅ローンを2本契約するために、2倍の手間がかかります。
忙しい人や、書類手続きが苦手な人にとっては、ストレスかもしれません。
三井住友信託銀行のミックスローンは、住宅ローン1本分の書類と手数料で済みます。かなり例外的な対応です。
基本的には、ミックスローンは住宅ローンに2本申し込むもの、と思っておくべきです。
借入金額に下限がある
銀行の多くは、住宅ローンの借入金額に下限を設定しています。ミックスローンは、住宅ローンを2本契約するので、通常の最低借入金額の2倍以上の借入が必要です。
安めの中古物件を買う人や、リフォーム費用として借り入れを考えている人は要注意です。
■参考:ミックスローンの最低借入金額
- 住信SBIネット銀行:1,000万円以上
- auじぶん銀行:1,000万円以上
- SBI新生銀行:3,000万円以上
ミックスローンの利息を少なく抑える方法
ミックスローンの利息をなるべく抑えるには、繰り上げ返済を積極的に行うのが重要です。
住宅ローンの利息は、日割りで加算されます。繰り上げ返済でローン残高を減らし、完済日を早めれば、最終的に支払う利息も少なくなります。
■利息を減らせる繰り上げ返済は「期間短縮型」
繰り上げ返済には、以下2種類のタイプがあります。
- 期間短縮型
- 返済額軽減型
期間短縮型は、ローン残高が減った分、完済日を前倒します。返済額軽減型は、繰り上げ返済したぶん、翌月からの毎月の返済額を減らします。
より利息をカットできるのは「期間短縮型」です。最終的に支払う利息を減らしたいなら、期間短縮型を選ぶとよいです。
ミックスローンでは、組み入れた2つの金利タイプのうち、どちらを繰り上げ返済するか選べます。
変動金利と固定金利のどちらを繰り上げ返済するかは、目的によって選ぶのをおすすめします。
- 変動金利から繰上返済すべき人
- 金利上昇リスクの回避を最優先にしたい人、毎月の返済額の変動を抑えたい人
- 固定金利から繰上返済すべき人
- 将来支払う利息を減らしたい人、万が一変動金利が上がっても返済できる人
変動金利から繰り上げ返済して早めに完済すると、あとは固定金利のみの返済となります。
金利が上昇しないうちに変動金利の分を完済できれば、その後の返済額が一定になり安心です。
変動金利が上昇したとき、返済する経済的余裕がない人も、変動金利から繰り上げ返済するのがおすすめです。
一方、金利が高い固定金利から繰り上げ返済すれば、利息負担を抑えられます。
固定金利分を完済すれば、あとは低金利な変動金利の返済のみになります。月々の返済額が大きく下がるので、返済が楽になります。
しかし、金利上昇のリスクも残ります。万が一、金利が上昇しても対応できる人向けです。
フラット35か変動金利のみで十分
個人的には、金利上昇のリスクに備えたいなら、ミックスローンより「フラット35」がおすすめです。
フラット35とは、住宅金融支援機構という公的機関が運営する、全期間固定金利の住宅ローンです。銀行独自の住宅ローンより、はるかに低金利で固定金利の住宅ローンが組めます。
フラット35は、さまざまな銀行が代理店のような形で販売しています。ミックスローンのシミュレーションで例にあげた「住信SBIネット銀行」も、そのうちの一つです。
住信SBIネット銀行のフラット35の利息を、変動金利やミックスローンと比較すると一目瞭然です。
前提条件:
・借入金額3,000万円、借入期間35年、金利は記事執筆時点のデータで計算
・ミックスローンでは、変動金利と全期間固定金利(通期引き下げ)を半々で組み入れ
金利タイプ | 金利(年) | 利息 |
---|---|---|
変動金利 | 0.44% | 237万7,441円 |
フラット35(全期間固定) | 0.99% | 551万1,561円~(※) |
ミックス(変動+当初10年固定) | 0.44%+0.91% | 370万9,588円 |
当初10年固定 | 1.35% | 766万3,293円 |
ミックス(変動+全期間固定) | 0.44%+2.92% | 1,015万6,301円 |
全期間固定 | 2.92% | 1,793万7,361円 |
※省エネルギーや頭金などの条件を満たし、フラット35S【保証型】で借り入れた場合。
上記の通り、金利上昇リスクに備えたいならミックスローンより、全期間固定金利のフラット35に申し込むほうがお得です。
ミックスローンのような二重でかかる諸費用もなく、シンプルな固定金利で返済を続けられます。
また、長く低金利が続いている近年であれば、「変動金利」を選ぶのもよい選択だと思います。実際、住宅ローンに申し込む人の約半数は、変動金利で契約しています。
日本銀行は2%の物価上昇を目指しているものの、依然として超低金利が続いています。変動金利の住宅ローンも、低金利のまま推移しています。
変動金利が上昇したときに備える収入や貯金があれば、変動金利もおすすめです。
■変動金利の返済額上昇には「上限」がある
変動金利は、好景気になれば金利が上昇し、返済額が増えます。しかし、上昇幅には上限があります。
まず、変動金利に契約後、金利が変動するのは5年ごとです。銀行の基準金利は半年ごとに見直しがありますが、実際に借入者の金利が変わるのは、5年スパンです。
そして5年ごとの金利見直し時も、返済額の増加は1.25倍までと決まっています。突然返済額が倍増するようなリスクはありません。
一般的に、変動金利は収入や貯金がある人向け、固定金利は返済額の上昇に対応するのが難しい人向けです。
将来の家計見通しが定かでない人は、フラット35を選べば安心だと思います。
フラット35では、従来よりさらに低金利になった「保証型」というプランを扱う金融機関が増えています。保証型の申込み条件を満たせば、さらに少ない利息でマイホームを購入できます。
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