ネット銀行の預金者が亡くなったらどうする?死亡時の口座解約方法と相続税対策
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ネット銀行の預金者が亡くなった際の相続手続きは、実店舗を持つ銀行とほぼ同じです。
大手銀行もネット銀行も、所定の書類手続きが必要です。役所に死亡届を出しただけでは、相続手続きは始まりません。
ただし、ネット銀行の口座は紙の通帳を発行しないため、保有口座の発見が遅れるリスクがあります。そこで、遺族のために今からしておくとよい対策と、相続税対策についても解説します。
目次
一般的な銀行と同じ対応でOK
最近は年代問わず、ネット銀行の利用者が増えてきています。「ネット銀行の相続手続きはどうすれはよいかわからなくて困った」という遺族も増えていくと思われます。
ネット銀行の相続手続きは、メガバンクや地方銀行とほぼ同じです。
亡くなった家族のネット銀行キャッシュカードなどを見つけ次第、まずはカスタマーセンターに連絡をします。ネット銀行には店舗がないので、名義人が亡くなったことは電話で伝えます。
連絡後、銀行から書類が郵送で送られてきます。あとは銀行の指示どおりに手続きすれば問題ありません。最終的には口座を解約し、預金を相続人に払い戻してもらえます。
たとえば、ネット銀行の老舗「PayPay銀行」の公式サイトでは、預金者が亡くなった際の相続手続きについて、くわしく記載してありました。
■PayPay銀行 相続(解約)手続きの流れ
- カスタマーセンターに預金者死亡の連絡
- PayPay銀行が口座取引を一時停止し、遺族あてに「死亡届」を郵送
- 「死亡届」・戸籍謄本(戸籍上で死亡を確認するため)・遺族(相続)代表者の・印鑑証明書などを送付
- PayPay銀行が遺族あてに預金残高を知らせ、「相続に関する依頼書」を郵送
- 「相続に関する依頼書」・相続人全員の戸籍謄本と印鑑証明書などを送付
- 指定口座へ解約金を払い戻し
銀行は預金者の死亡を知ると、遺族間トラブルを防ぐために口座を一時凍結します。一部の遺族がお金を引き出して持ち逃げするなど、相続前のトラブルが起こらないように配慮する目的です。
遺言書などをもとに相続内容を決定し、相続人全員が合意して初めて、凍結解除の手続きを進められます。
PayPay銀行では、この「相続人全員が合意したこと」を確認するために、相続依頼時に相続人全員の戸籍謄本や印鑑証明書が必要です。
場合によっては、相続人全員から公的な書類を集めるのに時間がかかるかもしれません。
※遺言書通りに相続する場合は、相続人全員の書類提出が不要になる銀行もあります。
遺言書がない、もしくは遺言書通りの相続をしない場合は、法定相続もしくは遺産分割協議での相続となります。
法定相続とは、法律で決まっている分配比率通りに相続する方法です(例:配偶者・子供1人の場合は1:1)。
遺産分割協議とは、遺族同士で話し合って相続配分を決める方法です。法定相続に沿わない相続もできる一方、銀行預金の相続手続きで「遺産分割協議書」が必要になる場合があり、手続きには手間がかかります。
暗証番号やパスワードは不要
ネット銀行の相続手続きをする際、暗証番号やマイページのログインID・パスワードがわからなくても問題ありません。キャッシュカードさえあれば、カスタマーセンターへの電話で対応してもらえます。
相続手続きはネット上では完結しません。郵送による書類取り交わしが必要になります。その際、戸籍謄本などの公的な書類の提出も必要になってくるので、遺族以外が手続きをすることはできません。
たとえば、戸籍謄本を受け取れるのは、配偶者や直系家族のみです。
ときどき、「ネット銀行の相続のために、エンディングノートに暗証番号やパスワードを書いておく」という人を見かけますが、この方法はおすすめしません。
暗証番号やマイページのログインID・パスワードは、身内であっても教えないほうが安全です。
これらの情報を知っていると、預金者のお金を自由に引き出せてしまうので、遺族間で情報が漏れるリスクがあります。相続について決まる前に、親戚の誰かが預金を引き出すトラブルにも繋がりかねません。
預金者の死亡後、一時凍結される前に誰かが預金を引き出したとしても、遺族は返還請求できます。
正式な手続き名は「不当利得返還請求」といい、場合によっては民事裁判を起こせます。預金者の相続人であれば、預金口座の取引履歴の開示も求められます。
ただし、返還請求の権利は、10年以上経つと時効になります。相続手続時に、銀行担当者へ取引履歴を確認させてもらうことをおすすめします。
ネット銀行口座の保有に気づくのが遅れることも
故人がネット銀行口座を持っていることに、なかなか気づけないこともあります。
代表的な事例は、キャッシュカードがないネット銀行を使っていた場合と、証券口座と連携していた場合です。
キャッシュカードなしの銀行口座だった
少数ですが、キャッシュカードを発行していないネット銀行もあります。代表例は、定期預金に強いオリックス銀行などです。
キャッシュカードがないネット銀行は、カードや通帳など、口座を持っているとわかる「物」がありません。口座番号を遺族に知らせずに名義人が亡くなると、口座の存在に気づくのが遅れてしまいます。
口座の存在を知るきっかけは、以下いずれかになると思います。
■キャッシュカードなしのネット銀行 口座の存在を知るきっかけ
- 休眠口座になった
- 口座引き落としの残高がゼロになった
10年間入出金がなかった銀行口座は休眠口座となり、銀行から名義人宛にハガキなどで通知が届きます。遺族がそれを見て、銀行口座の存在に気づけます。
もしくは、ネット銀行を何かしらの口座引落に利用していた場合、口座残高不足のハガキが来て気づくケースもあります。
証券口座との連携をしていた
ネット銀行には、ネット証券口座と連携できる銀行が多くあります。楽天銀行や住信SBIネット銀行、GMOあおぞらネット銀行などが有名です。
銀行口座と証券口座を連携し、投資によって得た分配金をネット銀行口座で受け取っていると、家族が亡くなっても定期的な入金で口座が動き続けます。
亡くなってしばらく経っても休眠口座とならず、口座残高がゼロになることもないので、口座の存在に気づけない可能性があります。
シニア層だと、毎月分配型の投資信託や配当金のある株式を保有し、年金の足しにしている場合があります。
銀行キャッシュカードが見つかれば問題ないですが、キャッシュカードが見つからないと宙に浮いた口座になってしまうので、要注意です。
故人が投資信託などを行っていた場合は、念入りにキャッシュカードを探すと安心です。
自分の死亡に備える方法
現在ネット銀行の口座を持っていて、相続について対策をしたい場合は、下記2つのいずれかを行っておくことをおすすめします。
■銀行口座を相続しやすくする方法
- キャッシュカードの保管場所を家族に共有
- 遺言書に記載しておく
何かしらの方法で、キャッシュカードの存在を知っておいてもらうと安心です。最近は、エンディングノートで情報をまとめる人が増えています。
暗証番号やログインID・パスワードまでは共有しなくても大丈夫です。むしろ、トラブル防止のためにも教えない方がよいです。
市販のエンディングノートにも、「暗証番号は書かないように」と注意書きがあります。
キャッシュカードの保管場所を家族に共有
家族にキャッシュカードの保管場所を伝えておくと、遺族が時間をかけて探す手間を省けます。
預金者が亡くなっても、キャッシュカードがあれば解約手続きが進められるので、まずはこれだけでも安心です。
財布にキャッシュカードを入れていれば、すぐに見つけてもらえます。カードホルダーに保管している人は、保管場所を教えておくことをおすすめします。
所有口座が多ければ、エンディングノートなどに銀行名と口座番号を書き記しておくのもよいと思います。
それぞれの銀行のカスタマーセンターの電話番号も記載しておくと、遺族が銀行へすばやく連絡できます。
遺言書に記載しておく
遺族の相続手続きをスムーズにするために、遺言書で相続について書き残しておくのもおすすめです。
遺言書がないと、相続について相続人同士で相談しなければなりません。口座解約の際にも、全員分の戸籍謄本が必要になり手続きが多くなります。
相続税の納税には、10ヶ月以内という期限があり、遺族は銀行口座以外の手続きにも追われます。家族の負担を減らすためにも、遺言を残しておくのが望ましいと思います。
一般的な遺言書は、自分で手書きで残す遺言「自筆証書遺言」です。日付と氏名を書いて捺印をすれば、遺言書とみなされます。
相続手続きがもっともスムーズに進むのは、公正証書遺言です。手間や手数料はかかりますが、公的書面として遺言書を遺せます。
公正証書遺言とは、公証役場に出向いて公証人立ち会いのもと作成する遺言書です。
手書きの遺言書は、銀行の解約手続きなどで提出する前に、家庭裁判所でチェック(検認)を受けなければなりません。実際に効力を持つまで、1ヶ月以上の期間も必要です。
一方、公正証書遺言は最初から「公的な遺言書」という扱いになるので、家庭裁判所を通さず銀行に提出できます。
特に資産が多い人は、公正証書遺言をおすすめします。公証役場は全国に約300箇所あり、駅から近い場合が多く足を運びやすいです(例:丸の内公証役場は東京駅から徒歩5分)。
病気などで本人が外出できない場合は、担当者に自宅や病院まで来てもらうことも可能です。
遺族は、最寄りの公証役場で請求手続きすると、故人の公正証書遺言を検索してもらえます。
相続税対策の失敗事例
ネット銀行に関わらず、財産を相続すると税率10~55%の相続税がかかります。
この安くない相続税を減らす方法のひとつに、生前贈与を行う方法があります。
相続税より贈与税の方が税金が少ないので、節税のために生前贈与をしたいと考える人も多くいます。
しかし気をつけないと、相続税対策のつもりで贈与を行ったにも関わらず、実際には相続税がかかってしまうケースもあるので要注意です。
よくある生前贈与の失敗例は、下記2パターンです。
■生前贈与のつもりが相続税がかかるケース
- 死亡直前3年以内に贈与した場合
- 故人「以外」の名義の預金口座に貯金していた場合
それぞれ具体的に見てみます。
死亡前3年以内に贈与した場合
預金者が亡くなる3年以内に相続人へ贈与した預金は、相続とみなされてしまいます。
たとえば、医者から親の余命が1年と聞かされて、預金を引き出すと、贈与ではなく相続扱いになります。
ただし、相続人「以外」への贈与であれば、相続ではなく生前贈与となります。
夫の相続人が妻・子供の場合、孫や子供の配偶者などは相続人になりません。この人達は、死亡3年前までに贈与しても、相続税はかかりません。
贈与税は1年に110万円以内なら非課税なので、相続人以外の身内に100万円ずつ贈与すると、贈与税もかかりません。
故人「以外」の名義の預金口座に貯金していた場合
自分「以外」の名義で口座を開設し、贈与をするケースもあります。
子供や孫名義で銀行口座を開き、子供用の貯金として自分の資産を入金するなどです。妻名義の口座で、自分の給与の一部を貯蓄するケースもあります。
特に、ネット銀行は印鑑不要で手軽に口座開設ができ、子供用の口座開設などにも便利です。
しかし、税務調査を通してこの口座が「名義預金」とみなされると、実質的には故人の口座という認識になり、相続税がかかってしまいます。
名義預金は亡くなる3年以上前に贈与していたとしても、相続税課税の対象となってしまうので要注意です。
名義預金とは、預金口座の名義が被相続人(亡くなった人)以外であっても、実質的に被相続人のものとみなされる預金のことです。
口座名義は家族でも、預金は故人のものとみなされ、相続税がかかります。
名義預金とみなされるおもな条件は、下記のとおりです。
- 被相続人がお金を入金している(例:夫が妻の口座に入金)
- 被相続人が口座管理をしている(例:親が子供の口座を管理)
- 口座名義人が口座の存在を知らない
- 口座名義人が贈与を受けたことを知らない
子供のための貯金以外には、専業主婦のへそくりなども名義預金扱いになりやすいです。
収入がないはずの専業主婦がまとまった金額を貯金していると、夫の収入を貯金していた可能性が高いとみなされるためです。
名義預金とみなされないためには、税務調査で確実に「贈与」とみなしてもらう必要があります。
ポイントは、口座の名義人が「預金を受け取った」としっかり認識しているか、です。
子供に贈与をする場合は、子供の預金口座を開設した後にキャッシュカードを子供(未成年なら親権者)に渡し、「この預金口座は子供のものだ」と認識してもらう必要があります。
「贈与契約書」を作成し、贈与を行ったという証明を残しておくと安心です。
身内間でそこまでするのは大げさに感じるかもしれませんが、書面があるといざというときに「贈与の約束をしていた」という証拠になります。
■連年贈与に注意
「1年に110万円以内なら贈与税がかからない」ということをふまえて、「毎年100万円ずつ口座に振り込んで節税しよう」と考える人も多くいます。
しかし、これは連年贈与とみなされて、贈与した合計金額に贈与税がかかってしまう場合があります。
振込みをするたびに贈与契約書を取り交わしておけば、「単発の贈与」扱いになり、連年贈与とみなされません。
参考:ネット銀行で子供名義の口座は作れる?デメリットも知った上で開設を
ネット銀行のカードローン残高に注意
ネット銀行の解約手続きをする際に、確認しておきたいのがカードローンを利用していたかどうかです。
最近のネット銀行の多くは、いつものキャッシュカードがあればカードローンを組めます。家族が知らないうちに、借入れをしている可能性もあります。
特にネット銀行は、Web完結で申し込めて郵送物も届かないカードローンがほとんどで、家族も借金に気づかないケースが大半です。
カードローン残高があると気づかず放置していると、通常の利息に加えて遅延損害金が1日ずつ加算されてしまいます。早急に対処するのをおすすめします。
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