現金の貯金方法、たんす預金や貸し金庫ではなく銀行口座がおすすめの理由
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タンス預金は盗難や災害リスクに弱く、補償を受けられません。すぐに使えるお金を貯金しておくのは大切ですが、タンス預金は最低限に抑えるのをおすすめします。
貸し金庫という手もありますが、借りている間は手数料がかかり続けます。
今回は、生活防衛費の貯金方法と、最低限準備すべき金額の目安を解説します。
※当記事のデータは、記事執筆時点(2022年5月18日)での情報です。
タンス預金が危険な理由
昔は現金をタンスにしまうことが多かったため、自宅でお金を貯めることをタンス預金といいます。今はタンス以外にも、机や本棚などにしまう人が多いようです。
近年は、タンス預金の金額が増加傾向にあります。キャッシュレス化や資産運用が推し進められる流れと、真逆の現象といえます。
タンス預金が増える理由として考えられるのは、銀行の預金金利の低さや、自ら資産を守りたいという考えです。
「銀行にお金を預けても利息が増えないなら、自分の手元に置いておきたい」という人は、意外と多くいます。現金を好む、日本人の性質も関係していると思います。
すぐに使える現金を持っておくのは大事です。しかし、大きなお金を自宅で保管するのは、さまざまなリスクがあります。
災害に弱い
地震による家屋損壊や火事、水害などで財産を失った際、地震保険や火災保険で補償を受けられるケースがあります。
しかし、現金であるタンス預金は、補償の対象外です。
地震保険や火災保険でカバーできるのは、建物と家財(家具や家電製品など)です。現金が燃えたり、水浸しになって使えなくなったりしても、戻ってきません。
■雑損控除で税金は軽くなる
災害や盗難で現金を失った際、「雑損控除」という税金控除を利用できます。被害金額と所得に応じて、所得税を低く抑えられる制度です。
しかし、雑損控除でお金が戻ってくるわけではありません。被害に遭った年から最長3年まで、税負担を軽くするのみです。
盗難リスクがある
自宅にある現金は、空き巣などの盗難に遭うリスクもあります。
警視庁の調べによると、2020年の侵入窃盗件数は2万件以上です。一日あたり約58件の住宅が、盗難に遭った計算になります(住まいる防犯110番「データで見る侵入犯罪の脅威」より引用)。
特に災害時は、窃盗も起きやすくなります。被災地の住宅は、窓ガラスやドアが壊れ、住宅に侵入しやすい状態だからです。警察も住民の避難誘導や救出に人手をとられ、犯罪の取り締まりに人手を割きづらくなります。
火災保険に盗難補償をつければ、盗難に遭った現金は戻ってきます。しかし、盗難の補償限度額には上限があります。現金は20万円までが大半で、大きなタンス預金は補償しきれません。
また、火災保険の補償範囲を広げると、保険料も上がります。盗難補償まではつけない人も多いのが現状です。
相続税対策にはならない
タンス預金をする人のなかには、相続税対策として貯める人もいます。
故人の資産を相続する際、銀行口座などには税務署の調査が入ります。自宅に置いてある現金なら、税務署にばれないと考える人が未だにいます。
しかし、タンス預金をしても相続税対策にはなりません。高確率で発覚します。
税務署は、故人や家族の銀行口座の入出金履歴を調べ上げます。収入に対して財産が少ないと思えば、自宅内の調査も可能です。
もしタンス預金があるとばれたら、不足分の相続税を収めるまでペナルティが発生します。
タンス預金の存在を知らなかった、つまり故意に隠したわけではなくても、税務署からの修正が入るだけで「過少申告加算税」がかかります。
さらに、納付日まで日割りでかかる「延滞税」、故意にタンス預金を隠したとみなされれば「重加算税」も発生します。税負担が大幅に増えます。
家族内でタンス預金の保管場所をしっかり共有しないと、相続税の申請漏れリスクが高まります。
タンス預金の盗難リスクを減らすなら、現金の保管場所は分散するほうが安全です。
しかし、相続税対策を考えると、保管場所は分散しすぎないほうがよいです。バランスが難しいところです。
貸し金庫は手数料が高い
タンス預金ではなく、貸し金庫に現金を保管したいというニーズもあります。
貸し金庫のメリットは、セキュリティの高さと、災害に対する強さです。東日本大震災が起きたとき、貸し金庫は被害に遭わなかったそうです。
また、まとまったお金の引き出しは、銀行預金より貸し金庫のほうがスムーズです。貸し金庫は、鍵や暗証番号を使えば、いつでも開閉できます。
銀行預金で大口出金する際は、通帳やキャッシュカードだけでなく、銀行印や本人確認書類が必要です。窓口で引き出し理由を聞かれることもあり、手間がかかります。
しかし、貸し金庫を借りているあいだは、利用料がかかります。一番小さいサイズ(およそ5.7cm×26cm×40cm)でも、メガバンクでは年間1万6,000円以上かかります。
貸し金庫に現金を預け、毎年お金が減っては、本末転倒です。貸し金庫に預けるのは、土地の権利書や貴金属など、現金以外の資産がおすすめです。
■葬儀代を貸し金庫に預ける必要はなくなった
急いで引き出す必要があるお金のひとつが、葬儀代です。
遺族に葬儀費用を遺すために、貸し金庫にお金を預ける高齢者もいます。名義人が死亡すると、遺産分割が終わるまで、銀行預金は原則引き出せないからです。
しかし、2019年7月に相続法が改正され、相続人1人の判断で預金を払い戻せるようになりました。葬儀代などの目的なら、スムーズに対応してもらえます。
現金の貯金は銀行預金が無難
結論からいうと、現金での貯金は銀行口座で十分です。
自宅のタンス預金より高セキュリティで、大きなお金も安心して預けられます。キャッシュカードが盗難に遭っても、すぐに利用停止すれば被害を防げます。
災害時も、銀行預金があると助かります。多くの銀行は、通帳やキャッシュカードがない人にも払い戻し対応を行います。
東日本大震災の際、東北エリアの金融機関は、10万円までの払い戻し対応を行いました。土日も臨時営業し、多くの顧客に対応しました。
災害で停電が起きると、ATMは使えなくなります。ATMが使えるようになるまで、銀行から引き出したお金で対応できれば安心です。
ちなみに、日本で停電が起きた場合、電気が復旧するまで1週間前後かかるといわれています。10万円あれば、1週間なんとか生活できるかと思います。
2019年10月6日に台風19号が上陸した際、千葉県の広い地域で停電が起きました。その際は、10日間で停電ゼロまで復旧しました。
また、銀行の円預金は、預金保険制度(ペイオフ)によって保護されます。銀行が破産しても、預金1,000万円とその利息は戻ってきます。
とはいえ、ここ10年(2009年~2019年の10年間)で倒産した銀行は2行のみです(中小企業庁「破綻金融機関等リスト」より)。大手銀行や、大手銀行がバックにつくネット銀行なら、破産リスクは非常に低いといえます。
最近は破綻する前に、合併や経営統合という対策を取る銀行が多いです。
また、銀行にお金を預けると、利息がつきます。タンス預金をしていても、お金は1円も増えません。貸し金庫は、逆に手数料がかかります。
金利の高い銀行に現金を預ければ、元本割れや破綻の心配なく、堅実にお金を増やせます。
参考:2022年版/ネット銀行の普通預金金利を比較 ランキングTOP7
生活防衛費や緊急予備資金の目安
具体的に、銀行預金で預けておくお金がどれくらい必要かは、一人ひとりの生活費によって変わります。
病気や失業、被災など、生活環境の変化に備えるためのお金を、「生活防衛費」や「緊急予備資金」と呼びます。
生活防衛費の大まかな目安は、3ヶ月から6ヶ月の生活費です。
被災など、生活上のリスクへの備えとして、一般的には月の生活費の3ヶ月分から6ヶ月分、場合によっては1年分の資金をもっておくと、いざというとき大変役立ちます。この資金のことを緊急予備資金といいます。
日本FP協会「やっておきたい災害の備え」より抜粋
生活防衛費の計算は、収入ではなく、生活費で計算するのが重要です。
親などの世帯主と同居している人なら、自分の生活費も少なめで済みます。生活費が月15万円なら、45~90万円ほど貯金があれば、安心です。
一人暮らしの人や、子どもを持つ親は、より多くの生活費がかかります。生活費が月30万円なら、90~180万円が必要になる計算です。
タンス預金として自宅にもお金を置いておきたいなら、生活費の1ヶ月分くらいまでを目安にするのがよいと思います。
しかし、緊急時に役立つのは、現金だけではありません。実は、災害に強いキャッシュレス決済もあります。現金とキャッシュレス決済、両方で備えるのをおすすめします。
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