銀行の貸し金庫は「絶対安全」ではない 相続や災害で困らない使い方が大事
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地震や台風などによる災害が相次ぎ、貸し金庫のニーズが高まっています。今回は、銀行の貸し金庫のメリット・デメリット、ほかの管理方法について解説します。
銀行や信用金庫の貸し金庫は、貴重品や資産を安全に管理するツールです。定額料金はかかりますが、相続や災害の対策のために選ぶ人が多いです。現金を預ける人もいます。
ただし、貸し金庫は絶対安全というわけではありません。契約する前に知っておきたい注意点をふまえ、賢い使い方をまとめました。
目次
銀行の貸し金庫の使い方
銀行の貸し金庫に申し込むには、以下の条件を満たす必要があります。
■銀行の貸し金庫を利用する条件
- 貸し金庫に空きがある
- 銀行口座を保有している
- 事前審査に通る
当然ですが、銀行の貸し金庫を利用するには、貸し金庫の空きが必要です。東日本大震災大震災の直後は、貸し金庫が空くのを待つ人もいたようです。
さらに、貸し金庫を利用する銀行の口座を保有している必要があります。貸し金庫の利用料は、口座引落で支払うためです。
口座の利用状況なども加味し、貸し金庫利用前の審査に通れば申し込めます。
貸し金庫の空きが少ない状況になると、審査が厳しくなることも考えられます。
今以上に貸し金庫が人気だった時代は、口座を持っているだけでなく、一定の取り引きが条件になるケースもありました。
古い口コミを見ると、預金残高や積立の利用を求められた人がいたようです。
貸し金庫の申し込みが完了すると、数日後に利用開始となります。
貸し金庫には、貸し金庫専用カードや鍵で開けるタイプの金庫と、暗証番号で利用できる金庫があります。金融機関によっては、静脈による生体認証で利用する金庫もあります。
それらを使えば、時間内にいつでも倉庫を利用できます。
利用時間は金庫タイプによる
貸し金庫が使える時間帯は、以下の金庫タイプによって異なります。
- 全自動型
- 個室ブースで暗証番号などの認証を行うと、自分の金庫が自動で運ばれてくるタイプ。利用者は金庫内に入らない。
- 半自動型
- 利用者が金庫に入り、借りている貸し金庫を開閉するタイプ。銀行員は同行しない。
- 手動型
- 利用者と銀行がそれぞれ1つずつ鍵を管理し、双方がないと開けられないタイプ。ほかの利用者がいるときに入室することはない。
- 簡易型
- 利用のたびに用紙記入の手続きを取り、銀行員が貸し金庫箱を運んでくるタイプ。
もっとも利用時間が長いのは、全自動型の貸し金庫です。金融機関によっては、銀行窓口が開いていない土日に利用できる場合もあります。平日に仕事がある人に向いています。
▼参考:京都銀行の全自動貸し金庫イメージ
利用時間が短いのは、手動型と簡易型の貸し金庫です。銀行員の立ち会いが必要なので、銀行窓口が空いている平日の日中のみしか利用できません。
半自動型の貸し金庫も、平日しか利用できない銀行が大半です。銀行によっては、手動型の貸し金庫より利用時間が少し長いケースもあります。
■例:横浜銀行 貸し金庫の利用時間
金庫タイプ | 利用時間 |
---|---|
全自動型 | 平日7:45~20:00 土日祝9:00~20:00(1月1~3日を除く) |
半自動型(全自動カード式) | 平日9:00~17:00 |
手動型 | 平日9:00~15:00 |
金庫のサイズ
銀行の貸し金庫のサイズは、A4封筒がゆったり入るくらいが目安です。
A4用紙のサイズは、21cm×29.7cmです。一般的な貸し金庫の底面の広さは、およそ25cm×40cmです。高さは5cmから20cmくらいまで幅があります。
▼貸し金庫イメージ
土地の権利証など、厚みの少ないものであれば小さい貸し金庫でも十分預けられると思います。印鑑などの小さいものの保管にも向いています。
貴金属や思い出の品を多く預けたい人は、ある程度大きめの金庫を借りる必要があります。
料金はおよそ月1,300~4,000円
銀行の貸し金庫の利用料金は、サイズによって異なります。
小さい貸し金庫(5cm×25cm×40cmくらい)なら、1ヶ月あたり1,300~1,600円ほどで利用できます。サイズが大きくなると、料金も上がります。
■三菱UFJ銀行 貸し金庫利用料金(税込)
サイズ(cm) | 年間利用料 | 1ヶ月あたりの料金 |
---|---|---|
5.7×26.2×40.0 | 16,170円 | 1,348円 |
6.2×27.7×49.3 | 22,440円 | 1,870円 |
8.7×27.7×49.3 | 29,700円 | 2,475円 |
■三井住友銀行 貸し金庫利用料金(税込)
サイズ(cm) | 半年間利用料 | 1ヶ月あたりの料金 |
---|---|---|
5.9×26.0×45.0 | 8,250円 | 1,375円 |
6.9×26.0×45.0 | 11,000円 | 1,833円 |
9.7×26.0×45.0 | 14,850円 | 2,475円 |
13.5×26.0×45.0 | 18,150円 | 3,025円 |
21.0×26.0×45.0 | 23,100円 | 3,850円 |
貸し金庫の利用料金は、半年払いや年払いの銀行が多めです。月払いの銀行は少ない印象です。
貸し金庫に申し込んだ際は、半年や1年分の利用料がまとめて口座引落となります。
銀行の貸し金庫のデメリットとは
銀行の貸し金庫のメリットは、何といってもセキュリティの高さです。盗難に遭うリスクは限りなく低いといえます。
一方、貸し金庫にはデメリットもあります。以下のデメリットをふまえ、検討することをおすすめします。
■銀行の貸し金庫のデメリット
- 審査が必要
- 利用時間に制限がある
- 銀行が被災し、金庫内の物が紛失したり壊れたりしても保障されない
前述のとおり、銀行の貸し金庫を利用するには、事前審査が必要です。誰もが利用できるわけではありません。
さらに貸し金庫のニーズが高まり、空きがなくなってくると、審査が厳しくなることも考えられます。
メインバンクや近所の銀行だけでなく、信用金庫や信託銀行など、複数の金融機関で相談することになるかもしれません。
防犯の流れで貸し金庫調べてるけど、どこも人気みたいで空きなし(^_^;)なにも知らないからしっかり勉強していかないと😅
— ましり (@tomorrow1567) December 6, 2019
貸し金庫の多くは、平日日中しか利用できません。土日も利用できる貸し金庫は、まだ少ない印象です。平日に働く人にとっては、気軽に利用しにくいと思います。
また、災害などが起きても、貸し金庫の中身が保障されない点も、知っておくべきです。
銀行の貸し金庫自体は、地震や火災に耐えられるよう作られています。しかし、銀行の建物が倒壊すれば、貸し金庫に預けたものはすぐに取り出せなくなるかもしれません。
「貸し金庫にある現金が引き出せないと困る」と言っても、銀行は補てんできません。
災害、事変、その他の不可抗力の事由または当行の責めに帰さない事由によって生じたお客さまの損害(貸金庫の開閉に応じられないことによる損害、格納品の紛失・滅失・き損・変質等の損害等)については、当行は責任を負いませんのであらかじめご了承ください。
三井住友銀行 公式サイト「貸金庫 ご留意点」より引用
被災によって金庫の鍵を失くしたり、契約者本人の死亡などで暗証番号がわからなくなったりする場合もあります。
このようなイレギュラー対応には、時間がかかります。災害が起きた直後だと、すぐに対応してもらえない可能性もあります。
厳重なセキュリティが魅力の貸し金庫も、「絶対」安全とはいえません。
貸し金庫に何を預けるべきか
「銀行の金庫に預けておけば安心」と考え、大事なものをすべて貸し金庫に預けるのは、おすすめできません。財産を安全に分散し、管理することが大事です。
貸し金庫に預ける人が多いものなかには、ほかの管理方法のほうが向いているものもあります。
貸し金庫へ預けるのに向いているものと、実は不向きなものを分類してみました。
向いているもの
まずは、貸し金庫と相性のよいものを見てみます。
■貸し金庫に預けるのに向いているもの
- 実印や銀行印
- 土地の権利証や有価証券などの重要書類
- 貴金属などの実物資産
- 思い出の品
実印や銀行印は、貸し金庫での保管がおすすめです。特に実印は、大きな契約をする際に使うものなので、厳重に保管するに越したことはありません。
土地の権利証や有価証券、保険証券など、重要な書類も貸し金庫での保管に向いています。かさばらないため、小さめの貸し金庫でも十分保管できます。
貸し金庫のスペースが足りるなら、貴金属や宝飾品、思い出の品や大事なコレクションを保管するのもよいと思います。
不向きなもの
貸し金庫での保管に向いていないものは以下のとおりです。
■貸し金庫に不向きなもの
- 総合口座の通帳
- 遺言書
- 現金
銀行の総合口座の通帳を預けっぱなしにしておくのは、おすすめできません。
10年以上取り引きのない口座は休眠口座となり、預金が銀行から預金保険機構に移ります。移管された預金を引き出すには、窓口での払い戻し手続きが必要になります。通帳やキャッシュカードでは引き出せません。
日ごろの取り引きをキャッシュカードで行い、通帳を貸し金庫に預ける場合も、デメリットがあります。しばらく記帳せずに取り引きを続けると、合算記帳されてしまいます。
合算記帳とは、記帳しなかったあいだに一定以上の取り引きがあると、複数の入出金明細をまとめて印字されることです。最終的な残高しかわからず、各取引の明細がわからなくなります。
一度合算された明細の中身を確認するには、窓口や電話で手続きする必要があります。基本的には、こまめに記帳することが望ましいです。
ふだんから通帳を使わず、紛失や盗難の対策をしたい人は、無通帳口座へ切り替えてしまうのも手です。
紙通帳をなくし、ネットバンキングで明細を確認するように切り替えれば、通帳の盗難リスクはなくなります(→無通帳口座のメリット・デメリットはこちら)。
総合口座の通帳ではなく、定期預金のみの通帳を持っているなら、貸し金庫に預けておくのもありです。普通預金の通帳と違い、こまめに記帳する必要がないからです。
ただし、大手銀行のほとんどは、普通預金と定期預金をまとめて管理する「総合口座」に切り替えています。
現在も定期預金のみの通帳を発行できる銀行の代表は、ゆうちょ銀行です。
貸し金庫に遺言書を預けるのも、あまりおすすめできません。銀行名義人が亡くなると、貸し金庫は一時的に開けられなくなるからです。
銀行口座の名義人が亡くなると、トラブル防止のために口座を一時凍結します。その際、貸し金庫も開けられなくなります。
貸し金庫の契約時に立てた代理人であっても、契約者が亡くなったあとは、原則開けられません。貸し金庫を開けるには、相続人全員の立ち会いや、死亡届提出などの書類手続が必要です。
遺言書が貸し金庫内にあると、遺言に沿った相続の相談ができません。相続人の同意を得るために遺言書を見たいのに、遺言書は貸し金庫の中、という事態になりかねません。
遺言書を見られたくない、安全に保管したいなら、公正証書遺言の作成をおすすめします。
公正証書遺言とは、公証役場で証人に立ち会ってもらいながら作成する遺言書です。完成した遺言書の原本は、公証役場で厳重に保管されます。
手数料が5,000円から4万円少々かかりますが、貸し金庫に自筆遺言書を預け続けるよりは低価格です。相続もよりスムーズに行えるため、おすすめです。
貸し金庫に現金を預けるのも、おすすめしません。
まとまった現金を貸し金庫に預けると、窓口出金より手軽にお金を引き出せる利点はあります。しかし、貸し金庫の中身は万が一の際に保証されません。
現金の管理は、銀行口座が安全です。銀行口座に入れた円預金は、預金保険制度(ペイオフ)によって、1,000万円とその利息まで保証されます。銀行が倒産しても、お金が戻ってくる仕組みです。
保障のない金庫に、利用料を支払い続けて現金を預けるより、無料かつ安全です。預金額が大きくなれば、利息ももらえます。
災害時も預金は引き出せる
貸し金庫に現金を預けたいと考える人のなかには、災害時の備えを想定している人もいると思います。
たしかに、台風19号の上陸時、停電によってATMが使えなくなった地域がありました。手持ちのお金がない人は、現金が引き出せず困る事態だったと思います。
しかし災害時には、通帳やキャッシュカードがない人にも、銀行はお金の引き出しに対応します。
台風19号の被害が甚大だった千葉県では、豪雨が発生した3日後に、千葉銀行が払い戻し対応を始めました。
通帳がなくても、預金者本人であると確認できれば、預金の払い戻しに応じました。印鑑がない人は拇印で対応するなど、非常に柔軟に対応しています。
被災されたみなさまへの対応
1.預金証書、通帳を紛失した場合でも、預金者であることが確認できれば、ご預金を払い戻します。
2.お届けの印鑑を紛失した場合は、拇印にて対応します。
3.ご事情を確認のうえ、定期預金などの期限前払い戻し(中途解約)ならびに定期預金を担保とするご融資も対応します。
4.今回の災害による障害のため、支払期日が経過した手形については、関係金融機関と適宜話し合いのうえ、取り立てができるように努めます。
5.今回の災害に起因する、手形・小切手の不渡り処分について、ご事情を考慮のうえ、対応します。また、電子記録債権についても同様に対応します。
6.汚れた紙幣や硬貨の引き換えについてのご相談に応じます。
7.国債を紛失した場合のご相談に応じます。
8.災害の状況、応急資金の必要性などを勘案して、迅速なご融資対応のほか、既存のお借入にかかるご返済条件の変更などのご相談に応じます。
9.停電によりインターネットバンキング等のご利用ができない場合、ご事情を考慮のうえ、代替手段をご案内します。
10.罹災証明書の入手が困難な場合のご相談に応じます。千葉銀行 公式サイト「自然災害(台風・突風)に関するお知らせ(2019年10月28日)」より引用
東日本大震災が発生した際も同じく、多くの金融機関が利用者への払い戻し対応を行いました。本人確認書類のない人も個別対応し、1日10万円まで払い戻せる体制を整えました。
このように、災害時は預金があれば、銀行のサポートを受けられます。容量の限られた貸し金庫に、必要以上に現金を預ける必要はありません。
よりくわしい解説はこちら:
現金の貯金方法、たんす預金や貸し金庫ではなく銀行口座がおすすめの理由