東京スター銀行の住宅ローン 預金連動で金利0%も可能だが本当に他社よりお得?
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東京スター銀行は、預金連動という独自のシステムを採用した住宅ローン「スターワン住宅ローン」を扱っていることで評判です。
預金連動とは、東京スター銀行に預けている特定の預金額分は、住宅ローンの金利がかからなくなるという珍しいシステムです。
もし、住宅ローン残高の全額以上の預金があれば、金利0%での返済も可能になります。
入院保障やがん保障も手厚いという隠れたメリットもあるので、預金をしっかりしておきたい人や万が一に備えたい人など、手堅くライフプランを組んでいきたい人向けです。
しかし、メンテナンスパック料や事務手数料などの諸経費はかかるので、他社よりお得かどうかはしっかり比較してみないとわかりません。
そこで今回は、東京スター銀行の住宅ローンが他社よりお得かどうか、預金連動でどれくらい利息を節約できるかをシミュレーションしてみました。
預金連動の仕組みや、少しわかりづらいメンテナンスパックの料金体系についても解説しています。
目次
スターワン住宅ローンの預金連動とは
東京スター銀行のスターワン住宅ローンをお得に利用する上では、「預金連動」という独自の仕組みを知る必要があります。
スターワン住宅ローンは東京スター銀行の預金と連動すると、東京スター銀行に預けているお金の分は住宅ローンの金利がかからなくなります。
たとえば、2,000万円の住宅ローンに申し込んだ人が、東京スター銀行に2,000万円の預金をすれば、実質金利0%で住宅ローンが組めるということです。
もしくは、2,000万円の住宅ローンに対して1,000万円の余韻があれば、金利を半減することもできます。
預金連動の対象となるのは下記3種類の預金で、優先順位が高いものから預金残高が反映されます。
■東京スター銀行住宅ローン 預金連動できる預金の種類(優先順位)
- 円普通預金
- 積立円定期
- 外貨普通預金
- オフセット定期預金(仕組預金)
特徴としては、優先順位が高い預金ほど金利が低く、リスクも少ない預金となっています。
たとえば、2018年11月時点のそれぞれの金利は、下記の通りでした。
- 円普通預金:0.001%
- 円普通預金(給与振込):0.1%
- 積立円定期:0.025%
- オフセット定期預金(円預入):1.5%
- オフセット定期預金(米ドル預入):1.5%
- オフセット定期預金(豪ドル預入):2.0%
円普通預金と積み立て円定期は、預金保険制度(ペイオフ)の対象となる預金なので、金利は低めですが元本保証で安心の預金です。
一方、外貨普通預金とオフセット定期預金は、高金利ではありますが元本割れが起こるリスクがあります。
4つの預金プランのうち、どれがおすすめかを検証してみました。
円預金は預金連動すると利子がつかない
スターワン住宅ローンの預金金利は、メガバンクやゆうちょ銀行と同じ最低水準です。
しかし、東京スター銀行を給与振込口座に指定するだけで、普通預金の金利が業界トップクラスまでアップするのが、最大のメリットです。
東京スター銀行の口座を給与振込に指定した場合の金利は、積立円定期や通常の定期預金を上回ることも多いです。
しかし、円普通預金と積立円定期は、住宅ローンの預金連動をすると「住宅ローン残高を上回った分」しか金利がつかなくなってしまうので要注意です。
たとえば2,000万円の住宅ローンを組んでいると、2,000万円までは円預金の金利がつきません。2,000万円を超えた分のみ、利子がつきます。
そして、スターワン住宅ローンの預金連動の優先順位も一番高いので、金利を受け取るためには住宅ローンの残高以上に預ける必要が出てきます。
住宅ローンを組んだばかりでローン残高が多いタイミングだと、難しいかもしれません。
東京スター銀行住宅ローンの預金連動をしつつ、利子も受け取りたい場合は、返済が進んでローン残高が少なくなってきてから円普通預金を増やす方がおすすめです。
外貨預金は米ドルがおすすめ
東京スター銀行の外貨普通預金を住宅ローンと預金連動すると、預金の全額に金利がつきます。住宅ローン残高分の金利がつかなくなる円預金に比べ、効率的に預金連動できます。
たとえば、1,000万円の住宅ローン残高に対して外貨普通預金が2,000万円なら、2,000万円全額に金利がつきます。
東京スター銀行の外貨普通預金は、米ドル・ユーロ・豪ドル・NZドル・南アフリカランドの5種類の外貨から選べます。
おすすめの通貨は、米ドルの外貨預金です。世界の基軸通貨として安心して預けられるうえに、東京スター銀行は米ドル外貨定期預金の金利が高めだからです。
東京スター銀行で長期的に外貨預金を運用するなら、「スターエリート外貨定期預金」というプランがおすすめです。
5年もしくは10年ものの外貨定期預金で、通常の定期預金より高めの金利が適用されます。
また、預入時の為替手数料が無料というメリットもあります。引き出し時の為替手数料も50銭と、メガバンクと比べて低めです。
オフセット定期預金は為替レートを要確認
オフセット定期預金は外貨普通預金より高金利な上に、外貨普通預金と同じく住宅ローンと預金連動しても全額に金利が付きます。
しかし、デメリットも多いので、預金する際は少し注意が必要です。
東京スター銀行のオフセット定期預金は、仕組預金(しくみよきん)という種類の預金です。
仕組預金とは、満期時に受け取る通貨が「円」か「外貨」か選べないかわりに高金利で運用できる、特殊な定期預金です。
たとえば、最初に円でオフセット定期預金に申し込んで、満期時に為替が特約レートを超えたら外貨での払い戻しとなります。
あまりにも極端に円高が進んでいると、払い戻される外貨を円換算した際に預入金額を下回るリスクもあります。
今後、預金通貨の為替レートがあまり上がらないと予想できる時に利用するのがおすすめです。
他にも、外貨で払い戻された場合や外貨で受け取った利息はペイオフ対象外になったり、途中で解約ができないなど、デメリットもあります。
そのようなリスクがあるため、一般的な預金より高金利になっているとも言えます。
よって、しばらくは円高にならなさそうだと予測できるタイミングに余裕資金で申込むことをおすすめします。
住宅ローンの預金連動で「ローン残高の金利をなくす」という目的で預金をするなら、しばらく使わない予定の資金を使うことが多いと思うので、その際はオフセット定期預金も選択肢に入れて良いと思います。
参考:高金利な仕組み預金のリスク、そのキャンペーン知らずに申込むと危険かも
外貨普通預金を活用するのがおすすめ
以上の特徴を踏まえると、預金連動で住宅ローン金利を抑える上でどの預金を増やせばいいかは、資産運用で何を大事にするかによって変わります。
■円普通預金・積立円定期がおすすめの人
- ローン残高分の金利がつかなくても、元本保証を優先したい
- 途中で円を引き出すかもしれない
■外貨普通預金がおすすめの人
- 米ドルをメインに運用したい
- 多くの利子を受け取りたい
■オフセット定期預金がおすすめの人
- 元本割れのリスクがあっても高金利で運用したい
- しばらく使わない余裕資金がある
元本割れリスクがある外貨預金は不安、という人は、無理せずに円預金で運用をしてもいいと思います。
ローン残高分の利子は付きませんが、預金した分だけ住宅ローンの金利が0%になるというだけでも十分お得です。
住宅ローンを組むタイミングが円安なら、米ドルの外貨普通預金も初めてよいと思います。いつでも引き出せる外貨預金から始めれば、突然の出費や為替レートの変動にも対応しやすいです。
オフセット定期預金も高金利ですが、満期まで引き出せないので要注意です。しばらく預けっぱなしでも問題ない余裕資金があれば、オフセット定期預金にも資産を分散しておくのもありだと思います。
たとえば、資産運用の好み別の預金方法を3パターン考えてみました。
■住宅ローン残高:1,000万円
- 円普通預金:500万円→利子なし
- 外貨普通預金:250万円→利子あり
- オフセット定期預金:250万円→利子あり
■住宅ローン残高:1,000万円
- 円普通預金:600万円
- 積立円定期:600万円
→200万円分だけ利子あり
■住宅ローン残高:1,000万円
- 外貨普通預金:600万円
- オフセット定期預金:600万円
→1,200万全額に利子あり
※ただしどちらも元本割れのリスクあり
金利以外の手数料はかかるので注意
上記の通り、預金をすればするほど住宅ローン金利は下がり、預金の利子も受け取れば住宅ローンの実質金利がさらに下がります。
しかし、住宅ローンには金利以外にかかる手数料などのコストもあるので、住宅ローンを検討する時は、それら手数料もふまえて比較する必要があります。
スターワン住宅ローンを利用する時に必要な諸経費は、下記のとおりです。
■スターワン住宅ローン 金利以外にかかる費用
- メンテナンスパック料:年0.3~0.702%
- 事務手数料:融資額の2.16%(初回借入時)
- その他、登記費用や印紙税などの実費
メンテナンスパック料は3種類
メンテナンスパック料とは、スターワン住宅ローン独自の手数料です。
メンテナンスパック料とは、各種手数料が無料になったり、団体信用生命保険を付帯するための保証サービスです。
3つのプランがあり、それぞれ費用と保証内容が異なります。
がん団信以外の保証が全てついたスタンダードプラン
- 返済休暇の利用
- 固定金利の選択が無料
- 繰上返済手数料が無料
- 入院保険
- 団体信用生命保険
■保証が最も手厚いプラン
- 返済休暇の利用
- 固定金利の選択が無料
- 繰上返済手数料が無料
- 入院保険
- 団体信用生命保険
- ガン団信
■万が一の保証をなくすかわりに費用をおさえたミニマムプラン
- 返済休暇の利用
- 固定金利の選択が無料
- 繰上返済手数料が無料
※メンテナンスパック3を選ぶ場合は、法定相続人を1人、連帯保証人にする必要あり
一番手数料が安いメンテナンスは、団体信用生命保険に加入できないので、おすすめできません。
団体信用生命保険、通称「団信」とは、契約者が死んだり高度障害になった時に住宅ローン残高の返済が免除される保険です。
住宅ローンに申し込む人のほぼ全員が団信に加入しており、遺族に住宅ローンという負債を残さないようにできるので、最低限加入しておきたい保険です。
その点、スタンダードなプラン「メンテナンスパック1」は、メンテナンスパック3に金利を約0.2%プラスするだけで団信だけでなく入院保険も付帯するので、お得です。
入院保険は、病気やけがで入院した時に保険金10万円が下りる保険で、日帰り入院も対象です。
さらに、入院中に住宅ローンの返済日が来た時は、その月の住宅ローン返済額にあたる金額も受け取ることができるので、医療費で出費がかさんでいる月も安心です。
一番保障が多いメンテナンスパック2は、さらにがん保険もつきます。
もし既に民間のがん保険に申し込んでいる場合などは無理につけなくても大丈夫ですが、がんと「診断されただけ」でローン残高が0円になるのは大きなメリットです。
他社のがん保険は、がんと診断された上で「就業不能」にならないと全額免除にならない住宅ローンが多く、ハードルが高めです。
スターワン住宅ローンの「がんと診断されただけ」で返済が全額免除されるのは、珍しいです。
事務手数料は平均的
メンテナンスパック料以外には、事務手数料や印紙税などの手数料がかかります。
事務手数料は、初回借入時に融資額の2.16%を支払うことになりますが、この比率は住宅ローンの中でも平均的です。
2,000万円の住宅ローンで契約すれば、返済初月は月々の返済額+43万2,000円の事務手数料を支払うことになります。
印紙税などの実費は、どの住宅ローンに契約しても同じ金額がかかるので、比較する際は加味しなくてもOKです。
無料の手数料も多い
一方、東京スター銀行の住宅ローン「スターワン住宅ローン」は、無料の手数料も多いです。
特に、繰上返済手数料が完全無料なので、お金に余裕がある月に積極的に繰り上げ返済をすればどんどんローン残高を減らしていけます。
■東京スター銀行住宅ローン 無料の手数料
- 保証料
- メガバンクなどでは有料の保証料は、東京スター銀行では無料です。
- 金利タイプの変更手数料
- 固定金利は固定期間中、変動金利は返済開始から6ヶ月移行なら、無料で金利タイプを変更できます。
- 一部・全部繰上返済手数料
- ボーナス月など、返済額を増やせる時はいつでも無料で繰上返済ができます。
- 返済休暇
- 返済開始から2年目以降は、一時的に元本返済額を1円まで抑えることができます。
返済休暇は、子供の進学など、お金がかかるライフイベントが重なった時などに住宅ローンの負担が減らせるので、メリットは大きいです。
しかし、減額できるのは「元本」の返済のみなので、利息の支払いは続くという点に注意が必要です。
元本が減らないと返済が長期化するので、最終的に支払う利息は増えてしまいます。
そういう意味では、住宅ローンはなるべく早く返済できるに越したことはありません。
預金連動でシミュレーション比較
では実際に、東京スター銀行のスターワン住宅ローンが他社よりお得かどうか、実際の最終返済額をシミュレーションして比較してみます。
預金連動でどれくらい利息が節約できるかも、計算してみます。
まずは、東京スター銀行で2,000万円の住宅ローンを組んだ時の最終返済額を試算しました。
※記事執筆時の金利、かつ元利均等返済方式で計算
■東京スター銀行「スターワン住宅ローン」
条件:2,000万円を当初固定5年で、30年間利用する場合
■メンテナンスパック料をプラスする前の最終支払金額
23,090,280円
■メンテナンスパック1(金利上乗せ0.504%)に申し込んだ最終支払金額
24,778,291円
■メンテナンスパック2(金利上乗せ0.702%)に申し込んだ最終支払金額
25,461,456円
次に、事務手数料が東京スター銀行と同じ「融資額の2.16%」の、住信SBIネット銀行と比較してみました。
必要な諸経費は同じなので、住宅ローンの返済額のみで比較します。
住信SBIネット銀行は、住宅ローンが低金利だと評判の大手ネット銀行です。
住信SBIネット銀行の「ネット専用住宅ローン」というプランで、上記と同じ条件で最終支払額をシミュレーションしてみました。
最終的には、メンテナンスパック1(最もスタンダードなプラン)より50万円ほど高いですが、メンテナンスパック2(最も保障が手厚いプラン)よりは100万円以上安いという結果になりました。
■住信SBIネット銀行「ネット専用住宅ローン」
条件:2,000万円を当初固定5年で、30年間利用する場合
■最終支払金額
24,152,085円
しかし、ここで比較したいのは病気とがんの保障内容です。
住信SBIネット銀行のネット専用住宅ローンは、全疾病保障が無料でつくのが1番のメリットです。
この全疾病保障は、ガンなども含むあらゆる病気・けがで就業不能になると、住宅ローンの返済が0円になる保障です。
しかし、今は医療技術が発達し、がんなどの大きな病気になっても働きながら通院できるようになってきているので、「就業不能」という条件は、かなりハードルが高いです。
通院中の医療費と住宅ローン返済を、両方支払わなければならなくなる可能性もあります。
その点、東京スター銀行のスターワン住宅ローンは、メンテナンスパック1か2なら日帰り入院から保険金が出ます。
さらに、住宅ローン返済日に入院期間がかかったらその月の返済額に相当する金額も受け取れるので、長期入院にも備えることができます。
その点では、住信SBIネット銀行より最終支払金額が50万円ほど高くなっても、東京スター銀行でメンテナンスパック1で申し込んだ方が、保険金を受け取りやすいと言えます。
また、メンテナンスパック2にグレードアップすれば、がんと「診断されただけ」でローン残高が0円になるがん保険も付帯するので、住信SBIネット銀行よりがんにも備えやすいです。
メンテナンスパック2になると最終返済額はやや高くなりますが、がん家系の人などは「がんになったら住宅ローンは返済しなくて良くなる」という安心感を得られるのは大きいと思います。
さらにメンテナンスパックの費用が高いと感じても、東京スター銀行住宅ローンならではの預金連動というシステムを使えば、利息負担を軽減できます。
預金連動で返済額がどれくらい減るか検証
ためしに、1,000万円預金するとどれくらい最終支払金額が変わるかも比較してみました。
■東京スター銀行「スターワン住宅ローン」預金連動の比較
条件:2,000万円を当初固定5年で、30年間利用する場合
預金額 | メンテナンスパック1 (金利上乗せ0.504%) |
メンテナンスパック2(金利上乗せ0.702%) |
---|---|---|
0円 | 24,778,291円 | 25,461,456円 |
1,000万円 | 23,166,000円 | 23,823,292円 |
2,000万円(ローン全額) | 20,000,000円 | 20,000,000円 |
1,000万円の預金があると、低金利と評判の住信SBIネット銀行の最終支払額が下回りました。
さらに、もし外貨預金かオフセット定期預金も行っていれば利息も受け取れるので、実質の金利はさらに低くなります。
将来のための貯金をしっかりしている人は、その資金を東京スター銀行に預るだけで住宅ローンの利息が減るのでおすすめです。
東京スター銀行に預金がないままだと、ネット銀行などの低金利な住宅ローンの方が低金利な場合もありますが、それでも保障の手厚さは魅力です。
