何百億もの売上をあげていた会社が売上剥落で倒産する理由

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アパレル

なぜ、上場しているような大企業が突然倒産してしまうのでしょうか。

また、なぜ億単位の売上高を築きながらも事業継続が困難となり、破綻してしまうのでしょうか。

下記はとある企業の倒産のニュースです。

オリジナル商品の開発に取り組み、ピークとなる21年6月期の売上高は約21億2800万円を計上した。

しかし、以降は消費低迷の影響を受け、さらに不採算店の閉鎖もあり25年6月期の売上高は約8億7700万円に減少した。

26年6月期も販売不振が続き売上高は8億2700万円に落ち込んだ。

その後も26年9月に札幌店を閉店するなど、売上が下げ止まらず業績回復の見通しが立たないことから事業継続を断念した。

この会社には、カリスマモデルがオリジナルのアパレルブランドを作り、流行に乗って急成長した過去があります。

しかし、ブームが去り消費低迷などの影響もあって、売上高が8億円もありながら倒産に追い込まれてしまいました。

ここでいくつかの疑問を整理しておきます。

疑問1.どれだけ有名なカリスマモデルであっても、最初から億単位のお金を用意できた可能性は低い。最初は小さくスタートし順調に業績を拡大していったはず。

疑問2.なぜ、最初は小資本でも黒字だったのに、最終的には売上高が8億もありながら倒産したのか。

この答えをこれから明らかにします。

売上を拡大するためにはさらなるお金が必要

仕入れ

カリスマモデルが小さな店舗を使って、オリジナルのアパレルブランドを立ち上げるという事例で考えてみます。

最初は手持ちの資金を使ってたった一人で洋服を作り、そこにデザイン料やモデルとしての知名度(ブランド)を利益として乗せて販売する。作った商品が売れると利益が手に入るので、ビジネスとして成立します。

しかし、売上が100万円から1,000万円、そして1億円、さらには10億円と拡大していくことをイメージすると、当然一人では10億円分の服を販売することはできませんよね。

売上が拡大したら、さらなる売上の拡大には

  • 仕入れる量の増加
  • 販売店舗の拡大
  • 従業員の雇用
  • 新商品を開発するための設備
  • ブランドを維持するための広告費

など、売上の増加とともに経費もどんどん増加せざるを得ません。

売るものがなければ売上は立たないので仕入れを増やす、在庫を保管したり多くのお客さんに商品を売るために販売店舗を増やしたりする、そこには従業員も必要となる。

さらに、定期的に新商品を作らなければ飽きられる、様々なファッション誌に毎月広告を打たなければブランドはすぐに忘れられてしまい、勢いを失う。

どれも、削ることのできない経費です。

経営のサイクルが上手くいっている間は「売上21億円に対して経費15億円、利益が6億円」のような形でビジネスが成立します。

しかし、ブームが過ぎ去ると売上はジリジリ下がることはなく、急激に落ち込みます。

一方で、雇用した従業員のクビは簡単に切れないし、出店したお店を売上の減少に合わせて閉店していくこともできません。

広告宣伝費を抑制してしまうとさらに売上の下落が加速するので、むしろ広告宣伝を増やさなければならない。と言った具合に、売上の減少に合わせて経費を減らすことは難しいです。

その結果「売上8億円に対して経費15億円、利益が7億円の赤字」となってしまいビジネスが成立しなくなる。売上回復の見込みがなければもう廃業しか道はありません。

一度大きくした会社は簡単に小さくすることはできず、起業当時のように、手持ち資金で一人で洋服を作る状態には戻ることはできないのです。

売上が落ち込んでも倒産しない方法

では、売上剥落による倒産を免れるにはどうすればよいのでしょうか。

固定費カバー率を高く維持する

バランス

今回あげた事例の倒産のポイントとなるのが、「売上の落ち込みで固定費をまかないきれなくなったから」ということです。

売上が拡大し、企業規模が大きくなると必然と固定費も増えます。売上は景気やブームによって変化しますが、固定費は一度増やしてしまうとそう簡単には減らすことができません

一方で、売上にも「固定収益」というものがあります。例えば、不動産の賃貸収入やカリスマモデルのファンクラブなどを作れば、毎月安定した固定収入が入ってきます。

どれだけカリスマモデルの知名度が下がっても、ファンクラブに加入している全員が一斉に解約することは考えにくいです。(不祥事でも起こさない限り)

つまり、流行に左右されやすい、作った服の売り切りビジネスモデルから、安定した固定収益が得られるビジネスモデルへと転換することで、増えた経費(固定費)をある程度カバーすることができます。

安定した固定収益で固定費をどれくらいカバーできているかを見る指標として「固定費カバー率」というものがあります。

固定費カバー率(%) = 固定収益 ÷ 固定費

固定費カバー率が100%以上なら、固定収益だけで固定費をカバーできている計算になるので、会社は赤字になることなく変動的な売上が上がろうが下がろうが黒字を維持できます。

固定費を増やさない努力をすることも大切ですが、事業規模が大きくなるに連れてどうしても固定費は増えますから、それと合わせて固定収益を確保していくという戦略が重要となってきます。

キャッシュフローを意識した経営を行う

キャッシュフロー

商品を仕入れて販売するビジネスモデルの場合、常に資金繰り(キャッシュフロー)との戦いがあります。

売上を拡大するためには、さらなる販売在庫を持つ必要があるので、常に利益以上の仕入れをし続けなければビジネスが回らないです。

その結果、常に運転資金を銀行から借り続けている会社はたくさんあります。これは決して悪いことではなく、ビジネスモデル上、運転資金を借りなければならないというのは、ある意味仕方がないケースが多々あります。

しかし、資金繰りの逼迫を解消するために頼り続けている借入金を少しでも減らすだけで、事業の安定度は増します。

また、「もらいは早く、支払いは遅く」というキャッシュフローを意識した経営を行うことで、必要な運転資金を最適化できます。

売上の回収は早期に行い、一方で仕入れ代金などの支払いは遅くする。

これだけでも足りない運転資金を減らすことができるので、結果的に銀行借入への依存度が低くなり、支払利息も減って利益率が向上するというビジネスモデルが描けます。

経費を変動費化する

増加

もう一つの方法として考えられるのは、経費をできる限り変動費化する方法です。言い換えると、固定費を増やさないようにするとも言えます。

前述の経費増加の中身をもう一度見てみましょう。

  • 仕入れる量の増加
  • 販売店舗の拡大
  • 従業員の雇用
  • 新商品を開発するための設備
  • ブランドを維持するための広告費

まず、自社で商品を仕入れ・製造することをやめて、製造・販売はすべて外部に委託し、自社はブランドを貸すだけのビジネスにすると、継続的な仕入れの必要性がなくなります。

いわゆる、加盟店からのロイヤリティー収入を得る方法に転換するわけです。

次に、自社で店舗を構えることをやめて、販売委託先から商品の一部を買い取り、楽天市場などにネットショップとして出店すれば、売上の一部を楽天に支払うだけで良いので、売上の減少とともに楽天への支払いも減り、事業の安定性が向上します。

従業員は必要最小限の人数だけを雇用し、あとは派遣社員やアルバイトで運営する仕組みを作れば、売上が減ってもすぐに人件費を削減できます。

また、継続的に広告費を投下しなくても、アフィリエイト広告のような「成果報酬型広告」を採用すれば、広告から発生した売上の一部を広告費用として支払うだけでよいので、これも変動費化できます。

変動費化のポイントは外部委託にあります。

自社ですべての機能を抱えずに、外部に任せられる部分は任せ、売れた分だけ支払う仕組みを作ることができれば、売上の増加に伴って経費も増えますが、逆に売上が減ると経費も減るので経営基盤も安定します。

どれだけ会社が大きくなっても倒産するときはする

悩む

上記をまとめると、「どれだけ会社の規模が大きくなっても倒産するときはする」ということがわかります。

わかりやすく言えば、トヨタやソニーのような日本を代表する企業でも、倒産する可能性はゼロではないということです。(もちろん、トヨタやソニークラスの会社が窮地に陥れば、どこかが買収に動くでしょうが)

もちろん、会社の規模が大きくなれば銀行からの信頼も厚くなり、いざというときの資金も援助してもらいやすいかもしれません。

しかし、会社の規模が大きくなるほど経営の舵取りは難しくなるもので、また負債を背負った時の金額も大きくなります。

仮に個人事業主でビジネスをスタートして300万円の借金を背負って倒産しても、一生懸命働けば十分返せるはずです。

しかし、冒頭で紹介した会社のように、5億円近い負債を抱えて倒産してしまうと、もはや社長個人がどれだけ頑張って働いても、一生返せない金額になってしまいます。

もちろん、新しいビジネスで一発逆転をして5億円をポンと返せる可能性もありますが、すでに5億の借金を背負っている人が、新しくビジネスをするために借入をしようと思っても、そう簡単にはいきません。

売上や利益の規模がどれだけ大きくなっても、倒産する可能性があるということを頭に入れ、ビジネスモデルの転換、固定費カバー率の引き上げを意識することは大切だと思います。

次の記事:キャッシュフロー経営が黒字倒産を防ぐ理由!資金調達は最小限に

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この記事の執筆者

執筆者の詳細プロフィール
26歳の時に右も左もわからない状態で個人事業主になりました。2年後、株式会社クートンを設立し、現在10期目です。「いい人」がたくさんいる世界の実現が目標です。「人の価値とはその人が得たものではなく、その人が与えたもので測られる」 - アインシュタイン 姉妹サイト「1億人の投資術」でも記事を書いています。

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