資産運用

退職後の運用先としてもおすすめ!個人向け社債の上手な買い方

退職後の資産運用

退職後の資産運用先として最も代表的なのは投資信託です。

これまで資産運用の経験がなかった人は、退職金定期預金を活用したり、投資信託とのミックス商品を買う方もいます。

しかし、定期預金と投資信託のミックスは「【しっかり運用セットNEO】投資信託+定期預金が本当にお得か解説します」で検証したように、私たち顧客にとってメリットが小さいです。

退職金の運用方法はたくさんありますが、その中でも私が安全な運用先としておすすめしたいのが、個人向け社債(公募社債)です。

個人向け社債とは、企業が発行する債券のことです。

個人向け社債に投資する

社債

債券とは、発行体(国・事業者・地方自治体など)がお金を集める時に発行する「借金」のことです。

銀行からお金を借りるのではなく、債券を発行することで多くの人から少額ずつお金を借りることができます。私たちは資金の出し手(投資家)となり、発行体にお金を貸し出します。

国が発行している債券のことを「国債」といい、個人向け国債が銀行や証券会社の窓口で販売されています。国債は安全性が極めて高いので個人投資家にも人気があります。

しかし、個人向け国債はマイナス金利の影響で利率が下がり、有益な運用先とは言い難いのが現状です。

一方で、事業者や地方自治体が発行する債券のことを「社債」と言います。

社債は、特定の人だけに発行される「私募債」と、一般募集をして多くの人に販売する「公募社債(個人向け社債)」があります。このうち、私たちが購入できるのは個人向け社債(公募社債)となります。

事業者や地方自治体は国よりも信用力が劣るため、社債は国債ほど安全とは言えない投資先です。もちろん、元本保証ではないため発行体(事業者や地方自治体)が倒産した場合は、投資資金を回収できない場合があります。

しかし、個人向け社債は国債に比べて信用力が低い分「金利が高い」ため、定期預金よりも高い利率で運用することが可能です。

また、信用力が低いと言っても「トヨタ自動車や三菱東京UFJ銀行のような大企業」が発行していることがほとんどです。

3年後にトヨタ自動車が倒産する可能性はゼロとは言い切れませんが、その可能性は極めて低い(つまりトヨタ自動車の社債は極めて安全)ということです。

定期預金と同じく利払いが受けられる

債券のキャッシュフロー

個人向け社債は、「元本一括返済の銀行融資」に似ています。社債を発行する企業が借り手、私たちは銀行側となる貸し手の立場です。

債券を発行する事業者はあらかじめ、個人向け社債の募集条件を提示します。

この条件には、「利率・期間・発行額・その他条件(担保の有無など)」が記載されています。

募集の段階で「利率(債券ではクーポンといいます)」が確定しているのは定期預金と同じです。また、最初から「期間(債券では償還期間と言います)」が決まっているのも定期預金と同様です。

利率が1%、償還期間が5年の個人向け社債を購入した場合、私たちは年率1%の利回りで年2回の利払いを受けることができます。

そして、5年後に投資した元本を一括返済してもらい、この個人向け社債への投資は終了となります。

仕組みとしては、定期預金とまったく同じで、自分たちのお金を銀行に預けるか、企業に直接貸し出すかの違いとなります。
定期預金と債券の違い

もちろん、定期預金は1,000万円まで元本保証であり、個人向け社債は元本保証ではないという大きな違いは忘れてはいけませんが、債券投資は定期預金と比較しても圧倒的な利回りでの運用ができるのがメリットです。

個人向け社債の発行条件には、担保の有無(無担保か有担保かなど)などの他に、繰上げ返済が組み入れられていることが多いです。

当初は運用期間5年で募集していても、企業が借り換えを実施した場合にその債券が3年などで早期償還(繰上げ返済)されることがあります。この点も、定期預金との違いの1つです。

ゼロクーポン債とは?

ゼロクーポン債は、個人向け社債の中でもやや特殊なので、余裕がある方だけ読んでください。

債券には上記で説明した「クーポン(利払い)」付きの債券と「ゼロクーポン債」という利払いがない債券があります。

クーポン付きの個人向け社債は定期預金と同じで、保有期間中は年2回の利払いを受けながら、償還期間が来たタイミングで元本を一括返済してもらう仕組みです。

100円の個人向け社債を買う場合、最初に100円を投じて、運用期間中に利息を受取、最終的に100円が返ってくるイメージです。

ゼロクーポン債というのは、保有期間に利払いが1度もありませんが、購入時に割引価格で債券を購入できます

つまり、100円のゼロクーポン債を買う場合、最初に90円を投じて割引価格で債券を購入します。運用期間中は利払いはありませんが、最終的に100円が返ってくるので、一番最後のタイミングで「元本+利息分の利益」を回収できる仕組みです。

社債のリスクと格付け

社債の累積デフォルト率 R&I

一般販売される「個人向け社債」は、基本的に大企業が発行するものが中心です。

つまり、元本保証でないとは言えローリスク・ローリターンなので安全性は極めて高いです。また、販売される社債の募集覧には「格付け」が記載されています。

格付けとは、「AAA(トリプルエー)、AA(ダブルエー)、A、BBB」などのランク付けのことで、これは専門の「格付け会社」が中立的な視点でおこなっています。

格付けの表記は格付会社によって異なりますが、下記の4つのポイントを押さえておけば問題ありません。

  • AAA(トリプルエー)が最高ランク
  • 同じAランク内ではAAAのようにアルファベットの数が多いほど高ランク
  • A+は記号なしのAより高ランク、A-は記号なしのAより低ランク
  • AAA、AA、A、BBB、BBと続く

また、格付け会社はそれぞれ、格付けした企業がその後どうなったかを定期的にチェックし「累積デフォルト率」を公開しています。

R&Iが2015年に実施した38年間におよぶ累積デフォルト率の調査によると、「AAAランクを獲得している企業は過去5年で1度も破綻していない」ことがわかっており、格付けの高い債券投資が極めて安全であることを証明しています。

債券のデフォルト率に関しては姉妹サイト「1億人の投資術」にて詳しく解説しています。

手を出す前に リスクの高い社債

今回紹介したのは、「普通社債」と呼ばれる一般的な債券です。

しかし、債券には様々な種類があり「債券=安全」というわけではありません。ここからは、初心者が手を出すことは控えた方がよいリスクの高い債券について解説します。

仕組債

仕組債

債券の中でも最も気をつけなければならないのは「仕組債」と呼ばれる特殊な社債です。

仕組債とは総称のことで、

  • EB債(他社株転換社債)
  • 日経平均株価指数リンク債
  • デュアルカレンシー債

など数多くの種類が存在します。

こうした多くの仕組債は、将来の株価が上がったか下がったかによって、利回りが変化する仕組みになっており、通称「デジタルクーポン債」などとも呼ばれています。

大抵は、デジタルクーポンやEB債といった名前が付いているのですが、仕組債の3つの特徴を押さえておけば、それが普通の個人向け社債ではないことをすぐに見破れます。

  • 有名な大企業の名前
  • 魅力的に見える高い利回り
  • 銀行や証券会社で積極的に販売されている

仕組債は銀行や証券会社で積極的に販売されているので、今回紹介した「通常の個人向け社債」よりも目にする機会が多いかもしれません。

そして、「トヨタ ・ 利回り7%」など有名な大企業と魅力的な利回りがセットで提示されています。

資産運用の経験が少ない人は、仕組債の広告を見て「安全なトヨタの債券が利回り7%なのか」と思ってしまうでしょう。

しかし、こうした事例ではそもそもトヨタの債券ではないことすらあります。また、仕組債の多くは投資家が大きなリスクを背負い、最終的に損をしてしまう可能性が高い設計となっています。

仕組み債問題は、過去にも幾度となく発生し、大きな社会問題に発展したこともある。1990年代には、農林系金融機関がEB債を数段激しいハイリスク商品に設計した日経平均リンク債を買わされて失敗し、経営危機に陥ったことすらある。

出典:東洋経済オンライン

仕組債は、その構造とリスクを正しく理解できないのであれば手出し無用の商品です。

仕組債に関する詳細な説明も姉妹サイトで行っていますので合わせてご覧ください。

外国債券

スウェーデン輸出信用銀行 トルコリラ建て債券

外国債券も証券会社や銀行が積極的に販売している債券の1つです。

個人向け社債は日本の大企業が発行しているため信用力が高く、円建てで買うことができます。対して外国債券は「外国の国債または社債」となっているため、外貨建てでの投資となります。

つまり、外国債券は為替変動の影響を受けるため、満期を迎えて投資額が返済されるタイミングで為替レートが悪化していると、元本割れを起こすことが往々にしてあります

また、信用力の低い新興国の外国債券ほど、利回りが高い傾向にあるので注意が必要です。この手の外国債券は、運が良ければ利益になりますが、前述のように為替レートの変動で失敗することが多いです。

最も注意しなければならないのは、上記画像のような外国債券の募集です。

スウェーデン輸出信用銀行とは、スウェーデンの政府系金融機関で非常に信用力の高い銀行です。格付けを見ても「AA+(S&P)」「Aa1(Moody’s)」という高い格付けを取得しています。

そして、償還期間が3年で利率が年10.18%とくれば、投資の初心者の方からすると魅力的に見えるはずです。

しかし、この外国債券の問題点は「トルコリラ建て」で投資をすることにあります。

「スウェーデン輸出信用銀行」と「トルコ」の関係は切り離して考えてください。全く関係がないので。

実はこの外国債券の利回り年10.18%のうち、ほとんどが「トルコリラ(トルコの通貨)」で運用することに対するリスク対価です。

この外国債券が募集されている時点で、トルコの政策金利は8%です。つまり、トルコリラに両替をして定期預金などに預けておくだけで8%近い利息が受け取れるのです。

なぜトルコリラの金利が8%と高いのかというと、それだけリスクがある通貨だからです。前述のように、この手の通貨は円高に触れやすく、3年後に債券が償還されるタイミングで円高になっていると、為替レートの変動で利益が目減りするか元本割れを起こします。

下記は、トルコリラ/円の為替レートの過去5年間の推移です。
トルコリラ/円の為替レート推移チャート

青色が「米ドル/円」の推移で、オレンジが「トルコリラ/円」の推移です。この5年間で米ドル/円の為替レートは40%ほどの円安になっています。

これはつまり、米ドル建ての資産に投資していると、為替レートの変動だけで40%程度の為替差益が得られたことを意味します。

一方で、トルコリラ/円の動きを見てみると、ちょうど5年前からだと約33%の下落、ピーク時からだと約45%も円高になっていることがわかります。

米ドル/円のような信用力の高い通貨であれば、為替レートは上昇したり下落したりするものですが、信用力の低い新興国通貨はインフレなどの影響で基本的に下落基調にあるため、外貨建て債券のように長期保有すると、為替レートで損失を被る可能性が高くなるのです。

上記で取り上げた外国債券の利率 年10.18%のうち、

・トルコリラ(通貨)のリスクに対する利回りは、年8.00%

・スウェーデン輸出信用銀行のリスクに対する利回りは、年2.18%

つまり、この債券は美味しい投資先でも何でもなく、ごく普通の社債をハイリスクな外貨建てに色付けして利回りを高く見せているだけ。

※ちなみに、トルコ国債の自国通貨長期の格付けは記事執筆時点(2017年7月末)で、BB+となっていました。また、トルコ国債の利回り(3年)は11.050%でした。

もちろん、リスクを取った運用をしたいのであればこれらの外国債券に投資をするのも悪くないと思います。

しかし、退職金という大切な資産を安全に運用するなら、商品ごとの正しいリスク認識し、安全な資産を中心に買うことが非常に大切です。

個人向け社債を買うには

パソコンをする団塊世代の男性

個人向け社債は、「銀行」や「証券会社」の窓口で販売されていますので、これらの金融機関に口座開設をすれば購入できます。

個人的には、ネット証券での社債購入をおすすめしています

なぜかというと、大手銀行・大手証券会社からすると「退職金を持っている資産運用の経験が浅い人」というのはカモ同然ですから、積極的な営業によって初心者が理解しにくい商品をすすめてくる可能性があります。

一方で、ネット証券は電話営業などは一切行いませんので、リスクの高い商品をお勧めされる心配はありません。

積極的な営業を受けたくない方は、ネット証券でシンプルな「普通社債」を選ぶのが最も正しい選択であると私は考えています。

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退職金の正しい運用方法

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